切ない話。―甲斐で萌える―

1  774  2004/07/06(Tue) 02:24
バレーボール甲斐選手で萌えたい人のための話。
べたに切ないラブストーリーです。

2  774  2004/07/06(Tue) 02:24

<side K>

女は苦手だ。
いや、ちょっと違うか。
人並みには好きだ。
いい女見れば、やりてーとか思うし。

ただ、ホレタハレタにまつわるいろいろが嫌だ。
何をどうすれば女が喜ぶかとか、そういうことわかんねーし。
すげぇめんどくせーとか思うし。
別に何にもしなくても女の子が寄ってくるようなタイプでもないし。
口下手だしマメじゃねーし。
誰かに夢中になって自分が自分でなくなったりするのもゴメンだ。

そういうのは、ほんとに、もう、いい。
今はバレーも面白いし。
なくていい。

じーさんとばーさんのカップルみたいに、何もなくて、何もしなくて、ただ空気みたいにそばにいるみたいのでいい。


3  774  2004/07/06(Tue) 02:25

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OQTが終わって、軽く抜け殻みたくなって。
ただ休みがあったから、何となく実家に帰って。
地元のテレビが取材に来たりして、何か周りもばたばたして。
OQT効果で軽く顔も見たことない親戚とかまったく記憶にない同級生とかも増えたりしてて。
でも、なんつーか、他人事というか。
結局アテネにも行けなかった訳だし。
騒がれても何か、気恥ずかしいというか、申し訳ないというか。
そんな気持ちで、落ち着けたんだか落ち着けなかったんだかよくわかんないけど。
でも、とにかくよくわかんないうちに休みも終わって。

堺に帰って。
堺のメンバー達が、軽く残念会というかお疲れ会みたいの開いてくれたりもあったけど。
堺の練習に合流したあたりから、やっと落ち着いたって言うか。
日常に戻ったというか。



4  774  2004/07/06(Tue) 02:26

でも、住み慣れた寮の自分の部屋に戻って、まだ片付けてもないOQTの荷物や、実家でかーさんが持たせてくれたあれやこれやや、テーブルの上のいつ飲んだのか記憶にもない、分離して怪しげなカタマリの浮いている飲み残しのペットボトルや。
そんなもんをぼーっと眺めてると。

あの歓声が耳に。

すごい経験だったと思う。
ナショナルチームに選ばれてもことごとく大舞台に間に合わなかった自分。
だから、あんなでかいゲームは初めてで。
緊張もしたし。
挫折も、苦しみも、痛みも。
やってる最中は、苦しいほうが多いと思った。
苦しかった。
苦しかった。
苦しいばっかりだと。



5  774  2004/07/06(Tue) 02:27

でも、自分のプレーで会場が揺れる。
観客の声が、歓喜が、落胆が、息を呑む音が。
カタマリになって押し寄せてくるような感覚。
自分が自分では想像もつかないほどすげぇ奴になれたり。
どうしようもないほどつかえねー奴になったり。
一瞬で変わる。
でも、一瞬でも自分が望む自分に手が届きそうになる。

鳥肌がたつほど気持ちよかった。

ゲームには負けた。
アテネは逃した。

だから、こんなこと言っちゃいけないのかもしれんけど。

でも。
俺は。
楽しかった。

楽しかったんだと、思う。



6  774  2004/07/06(Tue) 02:28

そのことに、やっと気がついた。
我ながら、自分の鈍感さにあきれるけど。
OQT終わってから、どれだけ経ってると思ってんだ?

でも、あれでも。
あれだけでもあんなにすごかったんだから。
オリンピックなんて出たら。
もう、すげーことになっちゃってんだろな。
すげーんだろな。

すげー。
すげー。

行きたかった、な。



7  774  2004/07/06(Tue) 02:29

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いつの間に眠ってたのか、携帯の着信メロディーで目が覚めた。
目を擦りながら薄暗い部屋、手探りで携帯を探す。

『さゆ』

開かない目でディスプレイの文字を見て。
ほんの少し、面倒になる。

いや、違う。
そんなわけない。

「も、しもし?」
口の中が苦い。
声が掠れる。



8  774  2004/07/06(Tue) 02:30

「あ、さゆです。……寝てた?」

耳に広がる、柔らかくて甘い声。
可愛い彼女。

「うん。うとうと、してた」
「ねぇ。明日、大丈夫?」

起き上がり、体を伸ばす。
憎たらしい腰が、小さく悲鳴を上げて。
時計を見る。

―――明日、なんだっけ。





9  774  2004/07/06(Tue) 02:30

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<side R>


くそったれくそったれくそったれ。
世の中くそったればっかりだ。

楽しくないのににこにこにこにこなんてできねぇ。
納得できねぇのにはいはいと返事もできねぇ。
悪くないのに謝るなんてできねぇ。

何で、こうも。
何もかも、うまくいかない?

挫折ばかり。
挫折ばかりの人生。
人生。

人生なんて。
はははははは。
笑っちゃう。
人生なんか語るほど、年取っちゃいねぇよ。



10  774  2004/07/06(Tue) 02:31

でも。
しんどいもんはしんどいんだよ。

あたしが。
男だったら。
男だったら。
もうちょっと上手くやっていけんのかな。
もっと強く、いられんのかな。

自分を愛することが。
すごく、難しい。

結局はあたしが一番くそったれ。



11  774  2004/07/06(Tue) 02:31

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やっとありついた仕事。
警備員。
真夜中の交通整理。

光るポールもって。
あっちの車をこっちに誘導。
あっちの車をこっちに誘導。

眠気と、気持ちの悪い疲労感と戦いながら。
一晩中。
同じことの繰り返し。
もう2度と夜明けなんかこないんじゃねぇかって。
そんな気分になる。

あっちの車をこっちに誘導。
あっちの車をこっちに誘導。



12  774  2004/07/06(Tue) 02:32

募るイライラ。
イライラ。
イライライライライライライラ。

何で、あたしこんなことやってんだ?
食べるため。
もちろん食べるため。
働かなけりゃ、おまんまは食べられません。

あっちの車をこっちに誘導。
あっちの車をこっちに誘導。

夜明けが近くなるほど。
頭が混乱してくる。
あたしは死ぬまであっちの車をこっちに誘導。
機械みたいに光るポールを振り続けることしかできないような気分になってくる。
それだけのために生きている。
それだけの価値しかない。
そんな人間に思えてくる。

光るポールを振る機械。



13  774  2004/07/06(Tue) 02:33

叫びだしたい気分。
何もかもぶち壊したい。

そんなときに。
そういつもつまんないジョーカーに付きまとわれる、あたしの運命。
ちゃちな悪魔。
そんなときに限って。
車体の低い、頭悪そうなズンズン重低音をはみ出させた車を止めた。
スモークガラスのウインドが5センチくらい開いた。
真っ赤なマニキュアをした指がそこから覗いて。
火のついたままのタバコをぽいっと捨てた。

運悪く、あたしの傍をかすり。
ポールを持った、あたしの左手の甲をかすった。

一瞬、痛みというより。
なんかちくりと刺さったみたいな。



14  774  2004/07/06(Tue) 02:34

でも、それだけで。
もやもやと膨らむ、あたしのなかの何かをバクハツさせるには。
それだけで十分だった。

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その後はよく覚えてない。

がつん。
その車の横っ腹を蹴飛ばして。
訳のわからない怒号をわめく自分を見た気がする。
運転席から男が出てきて。
突き飛ばされて。
あたしはその男につかみかかって。

工事のにーちゃんたちが走ってきて。
片側通行の向っ側担当のオッサンが走ってきて。



15  774  2004/07/06(Tue) 02:34

揉みくちゃにされて。
小突かれて。

痛みはあんまり感じなくて。
自分で抑えられない怒りが大きすぎて。

気がついたら。
オッサンに無理やり頭を押さえつけられて。
車の男に頭を下げさせられてて。

せっかくありついた仕事。
クビになってて。

「女の癖になんてことしやがるんだ」
「お前みたいなロクデナシ雇うんじゃなかった」
「何様のつもりだ」
「可愛げのない小娘だ」
「2度と顔を見せるな」



16  774  2004/07/06(Tue) 02:35

いろんなこと言われた。
でも、昔から何度も言われた言葉。

でも、あたしは、そういう生き方しかしらない。

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いまどき4畳半一間のアパート。
家賃は月3万円。
共同便所。
もちろん風呂はなし。

探せばこんな物件あるんだ。
探した自分で笑っちゃった。

住人は。
負のパワーに満ち満ちた人間ばかり。
生活保護を受けてる障害者の息子と老婆の母親。
ギャンブルで身を持ち崩したアル中のオヤジ。
身寄りのない半分寝たきりのじーさん。

そして、イライラばっかりで体を膨らました、帰るところも行くところもない。
不良の小娘。



17  774  2004/07/06(Tue) 02:35

電話もテレビもない。
薄っぺらい布団と、古いラジカセと、ぼろぼろのムスタングベースしかない。
あたしの部屋。

じっとりしけった布団にごろんと横になると。
やっと体のあちこちに痛みを感じはじめた。
男に殴られたところ。
地面に転がされて擦りむいたところ。
体の節々がぎしぎしときしむ。

生きていくのは、あたしには、簡単じゃないなぁ。

でも。
大丈夫。
今は、眠ってしまおう。
眠ってしまえば。
あと、もう少しは。
なんとか大丈夫。



18  774  2004/07/06(Tue) 02:39
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今日は以上。

全然ここのシステムをわからずに書き始めたので、
何かおかしなことしでかしてたら教えてください。
がつがつ視点の変わる話です。わかりにくくてごめんなさい。
一応<side K>が甲斐視点。
<side R>が(まだ名前も出てきてないがw)ヒロイン視点でし。

感想もらえるとうれしい。

19  774  2004/07/06(Tue) 17:48
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<side K>

さゆは俺の、彼女。
彼女、か?
まぁ、多分、彼女。

俺には全然もったいない。
すげー、可愛い。
新日鉄の関連会社かなんかの受付嬢で。
雑誌の読者モデルとかなんとかみたいなこともしてて。
おしゃれだし。
スタイル抜群。
たまに関西ローカルのテレビにも出てたり。
いわゆるプチタレント?
そこそこ、こじゃれた連中の中じゃ有名人っぽいけど。
別にチャラチャラしてるわけでもないし。
素直だし。



20  774  2004/07/06(Tue) 17:49

付き合いは全然長くなくて。
OQTの合宿前に、社内報だか、業界誌だかわかんねーけど、それの取材で。
堺の練習見に来てて。
俺にインタビューして。
いや、インタビューしたのは本社の広報部の人なんだけど。
そーゆーのよくわかんねーんだけど。
なんだかとにかく彼女がインタビューしてるみたいに一緒に写真撮るのに来てて。
つーか、まぁそーゆーことはどうでもいいんだけど。

すげーきれーな子だなーと思った。



21  774  2004/07/06(Tue) 17:49

その子が、メアド聞いてきて。
取材の次の日、メール来て。
社交辞令だと思ったけど、一応返事して。
そしたらまた返事が返ってきて。
今度ご飯食べに連れてってくださいとか言われて。
じゃ、そのうち。とかって話になって。
何度かご飯食べて。

でも基本的にOQT前で忙しかったし。
こっちにいないことも多かったし、そう頻繁に会ってたわけじゃないけど。

でも、何度かヤって。



22  774  2004/07/06(Tue) 17:50

それはある意味夢みたいってゆーか。
こんな可愛い子が何で?みたいな。
俺は絶対オンナにもてるタイプじゃねーし。
バレーやってるから。
スパイク決めて、見に来てくれた人がキャーキャー言ってくれるんのがモテるって言っていーんなら、モテてんのかも知らんけど。
でも、間違いなく、一人の男としての俺は。
どっちかってーと、つまんないタイプだし。
いかついし。
晩生な方だとも思うし。
結局、青春時代、バレーしかしてなかったわけだし。



23  774  2004/07/06(Tue) 17:51

ただ、何だか。
さゆと一緒にいても。
さゆのこと、
「俺の彼女だ」
って思えねーんだよな。

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「疲れてない?」

優しい声でさゆが聞く。
テーブルの向こうのさゆを見る。
ほんの少し気遣う様に俺を見上げる、ぱっちりとした目。
抜けるように白い肌。
細い肩にかかる、柔らかいほんの少し茶色い髪。
絶妙。
絶妙に可愛いんだな。



24  774  2004/07/06(Tue) 17:51

「別に、大丈夫。結構休んだし」
「いろいろ周り、騒がしかったでしょ?」
「うん、でも、まぁ。あんまり気にしないから」

さゆはちょっと視線を落とす。
きれいにピンク色に塗られた自分の指を見つめる。

「さゆは……ちょっと気になっちゃった」
「え?」
「何か、こんなこと言うの馬鹿みたいだから、絶対言わないでおこうって思ったのに……」
「何?」

さゆはゆっくりと視線を上げる。
心持、濡れてるみたいにキラキラと光る瞳。

「甲斐くんが、すごい遠くにいっちゃうみたいで。さゆのこと忘れちゃうんじゃないかって」



25  774  2004/07/06(Tue) 17:52

ドキドキと胸が鳴った。
すげー、可愛くて。

「甲斐くん、一生懸命がんばってるの、知ってるのに。すごい応援してるのに」

まばたき一回。
えへへ、と少し情けない顔で笑ってみせる。

「ごめんね」

すげー、可愛くて。
カンペキで。

でも、映画を見てるみたいだ。


26  774  2004/07/06(Tue) 17:52

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さゆと歩いてると、道行く人が振り返る。
俺一人で歩いてても、よく振り返られるけど。

チームにいれば小さい方でも、世間一般の基準からすれば立派に大男で。
いかつい顔に、ヒゲボーズ。
そりゃ誰でも振り返るわな。
怖いもの見たさで。

でもさゆと歩いてるときの振り返られ方はそんなんじゃない。



27  774  2004/07/06(Tue) 17:53

みんなまず、俺を見る。
何だこのいかつい大男は、って目で。
その後、さゆに視線を移す。
170近い長身にバランスのとれたナイスバデー。
ふわふわと波打つ長い髪。
派手じゃないのに目を引くファッション。

どこがどう違うかわわかんないけど、でも、その辺の女の子とは違うんだってオーラ。

そして、俺に戻ってきた人々の視線は。
羨望の混じったモノになる。



28  774  2004/07/06(Tue) 17:53

それに優越感を感じないといえば嘘になる。
どうだ?いい女だろ?
心のどこかで、そんな気持ちになってる自分がいる。

でも、反対に。
言い訳してる自分もいるんだ。
誰に?
何を?

でも、そんな人々の羨望の視線を感じるたびに。
「いや、違う。これは、ほんの一時のことで。なんでもなんだから」
って。



29  774  2004/07/06(Tue) 17:54

おかしな話だ。
さゆは俺を好きだと言ってくれる。
俺もさゆを好きだと思う。

なのに。

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突然、繋いでいた手をぎゅっと握られて。
少し慌てた。

「どうした?」
さゆが、俺をじっと見上げていた。
潤んだ瞳に、間の抜けた俺の顔が映ってた。



30  774  2004/07/06(Tue) 17:54

「甲斐くん、時々、一緒にいても、心ここにあらずってときがある」

ほんの少し、泣きそうな色をしたさゆの声に、もっと慌てる。
俺、何か変なこと言ったっけ?
さゆ、何か話してたっけ?

もともと、ぼーっとすることは多い。
何か考えてるかっていうと、実際何も考えちゃいない。
ただ、ぼーっとしてしまう。
それで、決して多くはないけれど、今まで付き合ってきた女の子達を、がっかりさせたり、悲しませたり、怒らせたり。
そんなことが度々あった。
でも、わかってるのに、やってしまう。



31  774  2004/07/06(Tue) 17:55

別に、退屈してるとかじゃないんだけど。
……多分。

「でも、いいの」
俺をじっと見上げたままさゆは言う。
「甲斐くん、すごいゲームをしてきた後だし、いっぱい考えることとかあるでしょ?だから、いいの。甲斐くんはすごい人なんだもん」
さゆの瞳の中の自分が、どんどん情けない顔になるのが分かる。
情けない。
もしくは、逃げ出したいような。

「でも、ときどき。一緒にいるときは、ときどきさゆの元に戻ってきてね」



32  774  2004/07/06(Tue) 17:55

なんだろう、この気持ち。
こんな俺に、こんな可愛い女の子が。
こんな健気な姿を見せているのに。

より一層、逃げ出したく、なった。

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さゆをタクシーに乗せて、時計を見る。
もうすぐ日付が変わる。
さっさと部屋に帰って。
明日は練習だし。

だけど。
なぜだろう。



33  774  2004/07/06(Tue) 17:56

さゆと別れた後は。
何か、どうしても。
何か足りないような気分になって。
ほんの少し疲労も感じて。

寮の近くの、いつもの店に向かってしまう。
なんてことはない、ふつーの小さな焼き鳥屋。
その名も「小金ちゃん」
でも、なんか落ち着けて、安心できる場所。
一人でも、仲間とでも。



34  774  2004/07/06(Tue) 17:56

ここで、一人になって、部屋に戻る前に。
自分に戻る為、インターバルをとりたくなる。

なんで、こんな気持ちになるんだろう。
多分、自分のせい。
あまりにもカンペキなさゆと。
あまりにも情けない俺。

自分の自信のなさが。
さゆと会った後は、いつもこの店に、足を向けさせる。



35  774  2004/07/06(Tue) 17:58
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更新以上。

飽きっぽいので、飽きる前に怒涛の更新です。
ところでここって、100スレ以下に落ちると倉庫逝きですか?
定期的にあげないとだめなんですかね。

多分、また夜更新する。

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36  コントラスト  2004/07/06(Tue) 19:07
はじめまして。
ここまで一気に読んでしまいました。
甲斐選手視点でつづられている小説は色々見ましたが、
正直、ここまでドライな感じの小説を見たのは初めてです。
何か勝手に書き込んで、こんな感想でごめんなさい。
でも、久々に続きが気になる小説に出逢えました。
また見に来させてください。

37  名無しさん  2004/07/06(Tue) 21:39
同じく、
ドライすぎてちょっとヒリヒリするのに「続き」が気になる。

某サイトで・・・モデル風美人とデートする甲斐選手を見た、と
いうのが話題になってて、それとカブって仕方ない。
だから、自分の中で微妙なリアル感がフツフツと。
飽きずに創作意欲を持続して欲しいです。

38  774  2004/07/07(Wed) 00:11
どうも感想ありがとうございます。
実際、自分の話、ここでちょっと浮いてる?と思ってたので。
非常に嬉しいです。

>>コントラストさん。
ありがとうございます。
本当の甲斐ってどんなかなー。こんなかなー。
と試行錯誤しながら書いてます。
続きがんばりますうれしいです。

>>名無しさん。
実はその話、自分も見ました。
てゆーか、彼女の「さゆ」はそこから思いつきました。えへへ。
壮大なベタでありつつ、ちょっとリアリティーもある話目指してがんがります。

では、更新。

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39  774  2004/07/07(Wed) 00:12

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<side R>

「だからさー、あたしはそんなこと言ってるんじゃねーよっ」
「何だよ、じゃあどーしろって言うんだよ」

アルコールが脳みその中を駆けずり回れば回るほど。
あたしの気持ちはヒートアップしていく。

「あんたがどんなオンナとつきあおーと知ったこっちゃねーし。ただ、女と遊びたいからってバンド辞めるなんて、男として情けなくねぇのかっ言ってんだよ」



40  774  2004/07/07(Wed) 00:12

バイトはクビになるし、財布の中には1500円しか入ってないし、来週には家賃払わなけりゃなんねーし。
この世の終わりみてーな気分で不貞寝してたとこ。
バンドのメンバーのマサシに呼び出されて。
酒飲ませてくれるってゆーから、喜び勇んで出てきたら。
いつもの小さな焼き鳥屋、「小金ちゃん」。
待っていたマサシはどんよりした表情で。

これまた不景気な話。

「るせーよ。おめーにはわかんねーよ」
「わかりたくもねーよ」



41  774  2004/07/07(Wed) 00:13

結成してまだ3ヶ月。ライブはよそのバンドの前座で、まだたった2回。
まだへたくそだけど。
まだ、これからってとこじゃん。
そりゃ、ここしばらく、こいつやる気ねぇなとは、薄々感じてたけども。

「大体、バンド辞めるなんて言ってねーだろ?しばらく休ませろって言ってんだよ」
「しばらく練習出れない、ライブも出れるかどうかわかんねーってーのは、辞めるってことだろ?それとも何か?てめーがオンナと別れるまで、あたしら大人しく待ってろってゆーのかよ?」



42  774  2004/07/07(Wed) 00:13

マサシは結構腕のいいドラマー。
半年前にとあるバンドのライブで出会って、意気投合して。
いろいろあって、バンドやることになって。

いい奴だけど、ちょっとアマちゃん。
大学生だし。
音楽しかないってあたし達とはちょっと違う。
彼女ができて、バンドよりも彼女を優先させたいって。

「じゃあ、代わりのドラマー探せよ。正直俺、お前についてけーねーよ」
「んだと?このヤロー」
「そりゃ、お前は偉いよ。一人で自活して、バンドにも全身全霊かたむけてさ。一生懸命やってんのはわかるけどよ。それを押し付けんなよ」



43  774  2004/07/07(Wed) 00:14

「俺はお前みたいに音楽だけが全てでも、一生一人ぼっちでもいいなんて思ってねーんだよっ!」

気がついたら。
グーが出ていた。
マサシのあごに。

テーブルの上のグラスが転がり、派手な音がして。
マサシは椅子から転げ落ちて。
他のお客さんの悲鳴があがった。

マサシはあごを押さえながら立ち上がり、あたしに詰め寄り。
あたしの胸倉をつかんで突き飛ばした。



44  774  2004/07/07(Wed) 00:14

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<side K>

小金ちゃんのドアを開けて。
ため息混じり。
店内に一歩踏み入れたときに。

何かが飛んできた。
どすん。
衝撃。

ぼーっとしてた俺は驚いて。
反射的に、それを抱きとめて。
自分の胸元のソレを確かめる。

つんつんに立った、ショッキングピンクの頭。
・・・・・・ショッキングピンクの頭ぁ?



45  774  2004/07/07(Wed) 00:15

俺に飛んできた。
いや、ぶつかってきたのは。
小さな体のオンナだった。

「てめーふざけんなぁっ!」

何がどうなってるのか理解するまもなく、女は。
ぶつかった俺のことを振り向きもせず、反射的に抱きとめていた俺の腕を振り払うようにして飛び出していく。

ピンクの頭。
袖を切ったぼろぼろの黒いTシャツ。
小さな体。
小さな背中。

その子は、目の前の男に飛び掛っていく。



46  774  2004/07/07(Wed) 00:15

何なんだ、このオンナは?
いったい何が起こってるんだ?

「甲斐ちゃんっ、止めてっ」

店のマスターの金造さんが、カウンターの向こう側から飛び出してきて言う。
揉みあってる彼女と男を引き剥がそうとする。
慌てて俺も、二人に近づき、ピンク頭を取り押さえようとする。

「ちきしょー、何すんだよ、離せよ。クソヤロー」

俺に羽交い絞めにされたオンナは喚きながらバタバタと暴れた。
なんつー口の悪い。



47  774  2004/07/07(Wed) 00:16

「おめーの顔なんか二度とみたくねーよ。勝手に一人で生きてけ。じゃーなっ!」

同じく、マスターの金造さんに羽交い絞めにされた男は、オンナにそう怒鳴りつけると、金造さんの腕を振り解いて店を出て行った。

何だ、何だ。
派手な痴話ゲンカだな。

「こっちこそ、てめーの甘ったれに付き合うのはまっぴらだよ。どこにでも行きやがれっ」

オンナは男の背中に喚きたてた。
男が出て行って、店の中は一瞬、水を打ったように静まり返った。
俺は、どうしていいか分からなくて、オンナのこと羽交い絞めにしたままで。



48  774  2004/07/07(Wed) 00:16

そして。
オンナは、やっと俺の存在に気がついたかのように。
クビをまげて、俺を見上げた。

まず、そのオンナの大きな目が俺の目に飛び込んできた。
目の周りに真っ黒なアイシャドーだかなんだかを塗りたくった、大きな目。
まっすぐに俺のことを見上げていた。
射抜くように、強くて、鋭い目。
青白いと言っていいほど、白くて血の気のない肌。
小作りな鼻。
不満げにゆがんだ小さな唇。
そして、その唇が、言った。

「んだよ。てめー」



49  774  2004/07/07(Wed) 00:17




それが、俺と、柄の悪いピンク頭の変なオンナ
―――「リュウ」との出会いだった。






50  774  2004/07/07(Wed) 00:19
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更新以上。

やっと。やっと甲斐とヒロインが出会った。
よかった。
何か長い話になりそうなヨカーン。
よかったらお付き合いお願いいたします。

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51  名無しさん  2004/07/07(Wed) 00:51
はいっ!ずっと付き合わせてくだい★
また更新頑張ってください♪
あげ↑あげ↑

52  コントラスト  2004/07/07(Wed) 01:20

あ。更新されてる。
ドライでいかつい男とホットでキツイ女の組み合わせが
一見、水と油っぽいけど、これからどうなっていくんだろう。
また勝手なこと書いてごめんなさい。
また774さんの世界に引き込まれに来ます。



53  名無しさん  2004/07/07(Wed) 08:55
37から引き続き。

ヘ、ヘロイン? いやヒロイン。
板上最恐ヒロインにこっちはびびりまくりだよ!
そして、マスターの金造さんはオカマさんなのだろうか・・・
という疑問を残しつつ出社。夜には更新されてるかな?

54  774  2004/07/07(Wed) 12:35
>名無しさん
ありがとうございます。
だらだら長い話になりそうです。
おつきあいお願いいたします。

>コントラストさん。
全然正反対の二人が恋に落ちる。これ、ベタなラブストーリーの鉄則(笑)
ただ問題は、その展開にどうやってリアリティーを持たせるか、と。
……がんがります。

>名無しさん。
最恐ヒロイン……(笑)
ありがとうございます。「いつもギリギリな女の子」が好みなのです。
何だか若い子が多そうなこの板で社会人とはちょっとうれしい(笑)

んでは更新です。

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55  774  2004/07/07(Wed) 12:36

<side R>

頭にきていた。
いろんなこと。

マサシのことも。
バイトクビになったことも。
何もかも。
何もかもがちっとも上手くいかないことに。

誰のことも許せない自分に。
怒りばっかりの自分に。

『俺はお前みたいに音楽だけが全てでも、一生一人ぼっちでもいいなんて思ってねーんだよっ!』

マサシにそう言われたとき。
頭の中の何かが、プチンとはじけた。



56  774  2004/07/07(Wed) 12:37

そう、あたしには何にもない。
帰るところも、行くところも。
信じられるものは音楽しかなくて。

ひとりぼっちで。

多分、それに一番イラついていたんだと思う。
あたしは、いつも、どこでも一人ぼっちで。

たぶん、これからも。

それをマサシに言い当てられて。
気がついたら、手が出てた。
あたしはいつも、自分の怒りを自分で抑えることができない。



57  774  2004/07/07(Wed) 12:37

暴れることしかできない。
言葉で自分の気持ちをあらわすことも。
誰かと分かり合おうとすることも、できない。

不完全で、ダメな人間。

それで、暴れて。
マサシを殴りつけて。
マサシに殴られて。
店めちゃくちゃにして。

誰かに羽交い絞めにされて。
あたしを押さえつけるその強い力に、硬い腕に。
やっと気が付いて。



58  774  2004/07/07(Wed) 12:38

頭にきて、振り返って。
その腕の主を見た。


―――何だ、この男?


でかい。
そう思った。

あたしを羽交い絞めにしてる男は、なんだかやたらでかい男だった。
首をいっぱいにねじらないと顔まで視線が届かない。
んで。
やっと視線が届いた、その顔は。
坊主頭に、ヒゲ。
やたらインパクトのある顔で。



59  774  2004/07/07(Wed) 12:38

指名手配のポスター。
もしくは爬虫類を彷彿させる、ヤバそうな目。
無表情で。
暴れるあたしを見下ろしている。

でかい体に。
あたしが力いっぱい暴れても、びくともしない腕。
強い、力。

やべぇ。
こいつ、ホンマモンだ。

久しぶりに、真剣に身の危険を感じた。



60  774  2004/07/07(Wed) 12:39

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「甲斐ちゃん、ごめんね。いらっしゃい」

マスターが男に言った。
男はやっと腕の力を緩める。
あたしは慌てて男の腕から逃げ出した。

「いきなりで、びっくりしただろ?まったく、このガキは」
マスターは男から逃げ出したあたしの頭を軽く小突くフリをした。

「いや、別に、大丈夫」
男は、ぼそっとマスターに答えた。

あれ?

「今日は一人?」
「うん」

うん、だ?



61  774  2004/07/07(Wed) 12:39

「ごめん、すぐ片付けるし。適当に座ってて。美穂ー。甲斐ちゃんにいつものー」
マスターが奥さんの美穂さんに声をかける。
男は、あたしのこと、ちょっと見て。
何でか、ほんのちょっと、軽く頭をさげて。
それから。
小さな店内で、でかい体を申し訳ないと思ってるみたいに、背中を丸めて。
すごすごと店の奥、カウンターの一番端っこに腰をかけた。

こいつ。
ホンマモンじゃなかったんか?
つーか、何モンだ?

―――変なやつ。

ぼーっと、その男を見ていると。
今度は本当にマスターに頭をゴツンと小突かれた。



62  774  2004/07/07(Wed) 12:40

「お前なぁ」
「ごめんなさい」
「ケンカなら外でやれって100万回ぐらい言ってるだろ?」
「えへへ」
「えへへじゃない。お前、こんなことばっか繰り返してっと、ほんとにそのうちシャレになんない目にあうぞ?」

マスターは、口の中で「まったくっ」と小さくつぶやいて。
それからあたしに雑巾とホウキを押し付けた。

「自分でめちゃくちゃにしたんだから、自分で掃除すれ」
「・・・・・・はーい」

自業自得。
あたしはしゃがみこんで、割れたグラスや、飛び散ったおつまみ達を拾い始めた。
そうしながら、初めて思う。



63  774  2004/07/07(Wed) 12:40

せっかく作ってくれた料理。
めちゃくちゃにしちゃってごめんなさい、マスター。

あたしは、いつも。
何だって気がつくのが遅い。

小さく反省しながら。
ちゃりちゃりちゃり。
割れたグラスを集めていると。

ぬうっと。
背後に圧迫感を感じて。
振り返る。

「……手伝おうか?」



64  774  2004/07/07(Wed) 12:41

大男が、立っていた。
相変わらずヤバいツラで。
無表情に。

でも、確かにそう言った。

「は?」

男は答えないで、あたしの傍に。
大きな体を窮屈そうに縮こめて。
しゃがみこんだ。

「甲斐ちゃん!いいよ、ほっときなー」
背後から、マスターの声がする。
男は首を曲げて、マスターの方を振り返ると。
何も言わず。

小さく、笑った。



65  774  2004/07/07(Wed) 12:41

小さなテーブルの下に。
チビのあたしと、でかい男がしゃがみこんで。
必然的に頭を付き合わせるみたいな、至近距離になってて。

そこで見た。
そいつの笑った顔は。

それほど、ヤバい感じでも。
なかった。



66  774  2004/07/07(Wed) 12:42

つーか。
何だよ。
子供みたいで。

―――変なやつ。




それが、あたしと、でかい体と悪そうな顔と、でも何だかぼーっとした男。
―――カイとの出会いだった。



67  774  2004/07/07(Wed) 12:45

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----------------------------------------

更新以上。

まだまだストックがあるうちにがっつり更新していきます。
多分続きは夜にでも。
……付いてきてね?(笑)

68  774  2004/07/07(Wed) 22:40

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<side K>

別にいいカッコしたかったわけではなく。
噛み付きそうに大暴れしていたオンナが。
男に「2度と顔も見たくない」なんて言われたオンナが。

小さな背中でしゃがみこんで、掃除してるのを見たら。
何となくほっとけないような気になって。

つい、声をかけてしまった。

オンナと並んで、ガラスの破片を、黙って集めていると。
ぼそり。
オンナが言った。



69  774  2004/07/07(Wed) 22:41

「さっき、ごめん」
「あ?」
「何か、あんたにもめちゃくちゃ言ったような気がする」

確かに、クソヤローとか、言われたような気がする。

「そっちこそ。大丈夫?」
ちょっと照れくさそうに、汚れた焼き鳥を拾っているオンナにたずねた。
オンナの白いほっぺたが、うっすら赤くなって、少し腫れていた。
「何が?」
「ほっぺた。腫れてる」
オンナは手の甲で、そっと自分の頬に触れた。
「ああ、こんくらい。全然」

そういった、女の。
棒っきれみたいに細い腕の、むき出しの肩の辺り。
竜のイレズミに気づいた。



70  774  2004/07/07(Wed) 22:41

イレズミをしたオンナ。
タトゥって言うのか。
初めて、近くで見た、な。

そう言えば、金造さんに「リュウ」って呼ばれてたっけ。

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それから、黙ってテーブルの下を片付けて。
こぼれた酒を拭いて。
ついでにテーブルに残っていた皿やなんやらも片付ける。

オンナは集めたゴミやら、雑巾やらを金造さんの所に持っていく。
二人は何やら話していて。
どうやらオンナは金造さんに謝ってるっぽかった。



71  774  2004/07/07(Wed) 22:42

俺は自分の席に戻った。
目の前に出された自分のボトル。
手酌でグラスに注いで、飲む。
ちょっと冷めかけてしまった軟骨を齧る。
注文しなくても、俺の好きなものを出してくれる。
こういう店が身近にあるのが、ありがたい。

やっと、落ち着いて。
ひとり、ぼんやり、酒が進む。

さゆとのデート。
可愛い彼女。
どこか気後れした自分。

疲労感。



72  774  2004/07/07(Wed) 22:42

そして。
いつもの店。
ケンカ。
イレズミをして、頭をピンク色に染めた、変なオンナ。

たまには、こんなハプニングも悪くないか。

「なぁ」
後ろから声を掛けられて振り向くと。

ピンク頭が居た。
ちょっと面白がってるような。
それでいてふてくされているような。
変な表情で。

「礼にさ、おごるよって言いてーんだけど。今日持ち合わせがなくってさ。あんたここよく来るんだろ?今度ここで会ったら、おごるよ」
「いい、別に」
「いくねーよ」



73  774  2004/07/07(Wed) 22:43

面白かった。
変なオンナ。

いや、明らかにオンナなのに。
これっぽっちもオンナという気がしない。

ピンクの頭も、破いて安全ピンで止めたでかいスカルのプリントのTシャツも、片手でつかめそうなほど小さい顔にやたらとでかい目も、欠食児童のような栄養失調のような薄っぺらい体も、ジャラジャラとこれでもかとぶら下げた重そうなごついアクセサリーも。

今まで、自分の周りにはまったくいなかったタイプの人間で。
ちょっと興味が湧いた。
基本的に、あまり他人に興味のない自分としては、珍しく。



74  774  2004/07/07(Wed) 22:43

何でそんな頭をしてるのか。
何でケンカしたのか。
リュウという名前だから竜のイレズミなのか。
何をしている人間なのか。
いくつなのか。
年下なのか、年上なのか。

何で。
何で、そんなふてくされたみたいな顔をしているのか。

だから、言ってみた。

「じゃあ、今日は一緒に飲む?」

オンナはよっぽど嬉しかったのか、初めてちょっと笑顔を見せた。
「お前って、いーやつだな」



75  774  2004/07/07(Wed) 22:44

オンナは隣にちょこんと座った。
俺は金造さんにグラスを頼んだ。
「焼酎でいい?」
「酒だったら、何でも」

「甲斐ちゃん、こいつ甘やかしちゃだめだよー」
グラスを持ってきた金造さんが笑いながら言った。
「るせー」
「こいつ飲むよー。甲斐ちゃんとどっちが強いかなぁ?」
俺はオンナのグラスに酒を注いでやる。
そして、俺達は小さくグラスを合わせた。



76  774  2004/07/07(Wed) 22:44

----------------------------------------

「でかい手」
「あ?」
「うわー、ありえねー。すげーでけー」
「ああ、一応、バレーやってっから」
「バレー?『そーれっ』ってゆーやつ?」
「そうそう、そのバレー」
「何で?学生?」

「リュウ知らんのかー?甲斐ちゃんはすげーんだぞ。全日本だぞ。この間ずっとテレビでやってたろ?アテネ予選。見たことねーのか?」

「だって、うち、テレビねーもん」
「テレビ、ないの?」
「ないよ」



77  774  2004/07/07(Wed) 22:45

「そーか、だからでかいのか。つーか、でも、スポーツ選手ってツラじゃねーよな」
「うるせーよ」
「ぜってーホンマモンだと思ったもん」
「何だよ、ホンマモンって」
「いやいや、別に」
「だいたい、ガラが悪いのはそっちだろ」
「いやいや、あんたにだけは言われたくないね」
「んだとぉ?」

会話は弾んだ。
オンナはぽんぽんと憎まれ口を叩いてくるから。
なんとなく引きずられて。
ふつーに男友達としゃべってるみたいだった。

もちろん酒のせいもあったんだろうけど。

普段、どっちかっていうと口下手で。
どっちかっていうと人見知りな俺が。
ふつーにこの得体の知れないオンナと話していた。



78  774  2004/07/07(Wed) 22:45

「でも、大丈夫か?」
「何が?」
「こんな風に飲んでて」
「何で?」

「いや、ほら、彼氏、あんなに怒って出てって。ほっといていいの?」

「はぁ?」
「さっきの、ケンカしてた、彼氏」

「ぎゃははははははは」

「んだよ」
「んなの、カレシじゃねーよ。友達。つーか、同じバンドのメンバー」
「…痴話ゲンカ、かと、思った」
「ちがーよ。バンドの話でちょっともめてさ」

「つーか、あたしホレタハレタに興味ないし」



79  774  2004/07/07(Wed) 22:46

俺と同じことを言った。
『ホレタハレタに興味がない』
でも、そんなオンナに会ったのは初めてだ。

「バンドやってんのか」
「うん。ガレージパンクっぽいの。ベース弾いてんだ」
「へぇ」
「音楽とか、どんなの聴く?」
「えーっと。ふつーの。浜崎とか、ケミストリーとかそーゆーの」

「うげぇ」

「んだよ」
「さいてー。なんのセンスも感じねー」
「るせぇな」
「音楽の話は辞めよう。ぜってー気が合わんわ」



80  774  2004/07/07(Wed) 22:46

オンナは酒も強かった。
飲んでも飲んでもあまり顔色も変わらない。
ただ、少し饒舌に。
少し笑顔が多くなる。
俺と同じ酒癖だ。

だから、どんどん深酒になった。
俺達は、どんどんどんどん。
にこにこにこにこしながら。
くだらない話をし、憎まれ口を叩きあい。
どんどんどんどん。
酒に飲まれていった。

楽しかった。
ふつうに楽しかった。

俺と同じペースで飲める奴もなかなかいなかったし。
OQT以降、あちこちで聞かれ続けて、あちこちで話し続けてたバレーの話をしなくてよかったことも。
ピンク色の頭も。
宇宙人みたいで、全然オンナじゃなくて。
女の子と話すのがそんなに得意じゃない俺が。
全然気にならなかった。



81  774  2004/07/07(Wed) 22:47

それに。
小さいころから、でかかった自分は。
家族もみんなでかいし。
バレーやってれば周りの連中も。
付き合う女もバレーやってる奴が多かったし。

だから、普通の、小さい体の女の子は苦手だった。
何か、壊してしまいそうで。
自分が、バレーやってるとき以外は、必要以上にでかいことを思い知らされてるみたいで。
怖がらせてしまうんじゃないかと思って。



82  774  2004/07/07(Wed) 22:47

なのに。
多分、150センチそこそこしかないだろう、ちっちゃなこいつは。
壊してしまうどころか。
怖がらせてしまうどころか。
下手したら、俺の方が噛み付かれてしまいそうな。
不遜な態度と。
攻撃的なでかい目と。
ガラの悪い風体と。

なんだか。
とっても。
気に入ってしまっていた。



83  774  2004/07/07(Wed) 22:48

だから。
二人、会話の意味もなく。
べろべろになって。
へらへら笑い合って。

金造さんに、閉店だからって追い出される頃には。
お互いを「リュウ」と「カイ」と呼び合うようになっていた。



84  774  2004/07/07(Wed) 22:49
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更新以上。

本当に恋に落ちるのか。
一抹の不安。
次回で第1章終わり。

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85  774  2004/07/08(Thu) 19:45

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<side S>

「もしもし?彰子?私、さゆ」

『おー、久しぶり。最近どうよ?』

「んー、まぁまぁかな。いまいちさ、むかついてんだよねー」

『何がー?男?何だっけ、バレーの選手だっけ?』

「そう。全日本の甲斐よー」

『まだ続いてたんだぁ。ぎゃはは。さゆにしては長いじゃん。でも、あれ、バレーの男ってオリンピック行けなかったんじゃねー?さゆ言ってたじゃん。「オリンピック選手の彼女」狙ってるって』



86  774  2004/07/08(Thu) 19:50

「そうなんだよー。だらしないったらないっつーの。せっかくあちこち網張って予選前にアイツ、引っ掛けといたのにさー」

『じゃあとっとと別れちゃえばいいじゃん』

「そーなんだよねー。バレー選手つったって、プロじゃないから所詮りーまんだしー、金持ってないしー。喋りつまんねーし」

『ぎゃははは、つまんないんだ』

「つまんねーよ。何か、こっちが何言っても聞いてんだか聞いてないんだか。ぼーっとしてるし」

『エッチは?どうよ。スポーツ選手だし。ケッコーいいんじゃねーの?』

「あー、そっちねー。まー悪くはないけどさー。その予選で腰痛めたらしくってさー。こっち戻ってから全然ナシなわけよ。超つまんねー」



87  774  2004/07/08(Thu) 19:50

『ひゃははは。そりゃお気の毒に。さゆ好きなのにねぇ』

「るせー。つーか。まぁいいんだ。そっちは別に。どっちにしろあいつとヤってるときは猫かぶってっからさー。そんなテクも披露してないしー。『あ、ダメ、イヤっ』みたいなー。清純ぶりっこで大変で全然楽しんでないからねー」

『最低ー!性悪ー!』

「お褒め頂いて、ありがとー。」

『つーか、だったら早く別れちゃえばいいじゃん』

「でもさー、結構遠征とか試合とかでいないこと多いじゃん?その間、こっちは全然てきとーに男と遊べるし。全然束縛とかしてこないしさー。やっぱさー、背高いしー。それに今あいつ、結構有名人だからさー。けっこーおいしいじゃん。まぁ急いで別れることもないかなーとかさー。一応キープっとこうかなーみたいなー」

『つーことは、次のターゲット、いるんだ?』



88  774  2004/07/08(Thu) 19:51

「んー。まだ狙うかどーか決めてないけどー。同じ予選出てた山本っているじゃん?知名度的に全然そっちのが上だしー。顔もけっこーイケてるしー。しかも実業団でも社員じゃなくてプロ契約してるらしーの。だから絶対甲斐より金持ってそーじゃん。」

『さすが。下調べはばっちりなわけだ』

「んふふー。しかも、うまい具合に、甲斐と同級で仲良くて。でチームもこっちなんだよねー。つーか、もう甲斐と3人で2回くらい一緒に飯食ったんだよねー」

『でたー。さゆの友達食い〜。で、アレだ。いつもの作戦だ。彼のことで相談があるのぉー。ってやつ!』

「そうそう。あれで転ばない男いないからねー。馬鹿だよねー男ってー」

『じゃあもう決定じゃん。さっさとそっち行っちゃえば?』

「それがさー。いまいちむかついてんのがさー。甲斐がいまいちこっちにのってきてないっぽいんだよねー。つーか、私ほどのいい女が付き合ってやってるってゆーのに、何かこう、私に夢中になってないってゆーか」



89  774  2004/07/08(Thu) 19:52

『ほう。魔性の女さゆ様としては納得いかない、と』

「だよ。こっちがいろいろ仕掛けてやってんのに。バレーしかできない、ぼーっとしたつまんない男の癖にさぁ。むかつくじゃん。やっぱ、別れるときにはさー、ぼろぼろになってもらわないとー。だからさー。もうちょっと引っ張ってー、私の魅力を存分に思い知らせてやった後に、ポイかなーってね」

『こわー。つーか、でもさぁ。さゆにしては珍しいんじゃん?そーゆーあんま特典のない男に固執するなんてさ』



「あんな奴に固執なんて、してないわよ」

「……プライドの問題よ」




90  774  2004/07/08(Thu) 19:54
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更新以上。

敵役登場。お約束ですから。
仮名かなで「りーまん」は規制ワードなのね。ゲラゲラ。

一応コレで第一章終わりというか。そんな感じで。

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91  *HIMAWARI*由実  2004/07/08(Thu) 23:08
面白いっ!!!!さゆに、引っかかって欲しくない〜〜↓↓


92  774  2004/07/08(Thu) 23:42

>*HIMAWARI*由実さん。
ありがとうございます。
ふふふ。でもオトコって馬鹿だからなぁ。ニヤリ。

絶対誰も付いてこれてない気もしますが。
書いた分は更新しないと気がすまないので、寝る前更新です。

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93  774  2004/07/08(Thu) 23:43


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第2話 「みりんとコースターとジッポ。」
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94  774  2004/07/08(Thu) 23:44

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<side K>

普通の日々。
練習して、練習して、練習して。
時々、仲間と飲みに行ったり。
さゆと会ったり。

時々、「小金ちゃん」ではリュウにも会った。
あれ以来、暴れている姿は見ていないけど。
見かけるたびに、頭がピンクから赤や黄色や緑に変わっていたり。
明らかにケンカっぽい痣を作ってたりしてた。
それで、いつもいい具合に酔っ払っていた。

俺達は、いい友達。
飲み友達になっていた。

穏やかで自分の好きな生活。
バレーと仲間と酒と。



95  774  2004/07/08(Thu) 23:44

でも。
やっと堺で落ち着いたと思うとすぐに、ワールドリーグ出場が決まり、全日本に呼び出された。

俺が呼び出されたのはリーグの後半戦だった。
それまで1勝もしてない日本。
オリンピック出場が果たせなかった全日本は一気にチームの若返りを計ってメンバーは若手中心にがらりと入れ替わっていた。。
1セットもとれずに海外遠征から帰ってきた若い奴らは、みんな、疲れ切り、負けることに慣れてしまっているみたいな顔になっていた。
故障者も多かった。

今まで「若手」と言われていた俺達は、一気に「経験あるベテラン」の仕事をしなくてはいけなくなっていた。



96  774  2004/07/08(Thu) 23:45

俺の腰もまだ万全じゃなかった。
本当は、チームに合流するのはまだ早いと思っていた。
でも疲れた後輩達の顔を見たら。
ぼろぼろになった全日本チームを見たら。

俺がこのチームを引っ張って行かなければいけないんだと強く思った。

リーグ自体はつらかった。
まだチームワークも確立できていない若いチーム。
それでも試合はやってくる。
後を絶たない故障者。
堺で世話になったこともある植田新監督にかかるプレッシャー。
暫定監督という微妙な立場。

勝ちが欲しい。
若いチームメイトのためにも。
監督のためにも。



97  774  2004/07/08(Thu) 23:46

試合を重ねるごとに、悪化して悲鳴を上げる腰の痛み。
朝、ホテルのベッドから立ち上がれない日もあった。
それでも、スパイカーの居ない今のチームで、ボールは俺に集まってくる。
決めなければ。
俺が決めなければならない。

それでも、勝ちはなく、積み上げられていく黒星。

OQTを一緒に戦った大輔と。
OQTの時よりたくさん話し合った。
このチームをなんとかしなければならないと。
俺達で、なんとかしたいと。
隆弘が居てくれたら。
そんな情けない思いが俺と大輔の頭を掠めることもあった。

OQTで敗れた挫折からまだ立ち直れない隆弘。
でも、このリーグで自分がスーパーエースという立場に立たされて。
自分が決めなければならない。
自分しか決められない。
そんな重圧を初めて知った。

隆弘の挫折を責めることはできないと思った。



98  774  2004/07/08(Thu) 23:46

だからこそ。
あのOQTの大舞台で、自分とは比べ物にならないプレッシャーと戦っていた隆弘がこのチームに戻ってくるまでは。
俺と大輔がこのチームを引っ張っていくんだ。
そう強く思った。

結局は、がむしゃらにやるだけで。
勝ちを信じてがむしゃらに戦い続けるだけで。
それしか、若いやつらに見せてやるモノはなかった。
その姿に付いてきて欲しいと思った。

そして、結局勝ちは掴めないまま。
リーグは終わった。

チームも、俺自身もボロボロになっていた。



99  774  2004/07/08(Thu) 23:47

だけど。
今までこんなに強く勝ちを望んだことはなかった。
ゲームの大きさなんて関係ない。
順位も、世界ランクも、オリンピックも関係ない。
ただ勝ちたいと。
目の前の勝ちを、どうしても手に入れたいと。
こんなに焦がれたことはなかった。

自分が、少し変わったことを感じていた。

今までも、真剣にやってきたし。
がむしゃらにやってきた。
自分にはバレーしかないことも知ってたし。



100  774  2004/07/08(Thu) 23:48

だけど。
もっと強い気持ちが自分の中に生まれていた。
たとえば、責任感とか、プロ意識とか。
言葉にしてしまえば、そんなよくある言葉になってしまうけど。

もっと強く。
もっと真剣に。

バレーが好きで。
強くなりたいと。

そして、プレイに対する重みを。

そんなものを感じるようになっていた。



101  774  2004/07/08(Thu) 23:49

----------------------------------------

「うわぁ。お土産なんて期待してなかったから。うれしい」

さゆは花のような笑顔を俺に向けた。
ワールドリーグ、ブルガリア遠征の土産を渡した。

土産なんて何を買ったらいいか、さっぱりわかんねぇ。
つーか、買うつもりなんてなくて。
いや、買ったほうがいいかもしれんとは、ちょっと考えたけど。

まぁ、別にいいかと。
買い物してる時間もなかったし。
遊びに来てるわけじゃないし。

でも、篠田や柴田が彼女にお土産買ってるのを見て。
つい、買ったほうがいいかな?なんて口にしたら。
まるで俺が犯罪でも犯したかのごとく責められて。

「彼女がかわいそうっすよ。甲斐さんって鬼ですね」

おいおい。
土産を忘れたフリしようとしただけで、鬼扱いかよ。



102  774  2004/07/08(Thu) 23:49

「彼女の喜ぶ顔とかみたくないんすか?」

見たくないわけじゃない。
そりゃ、喜んでもらえれば嬉しい。

でも。
あいつの、さゆの。
喜ぶ顔って。
わざわざ見なくても、想像ついちまうんだよな。
だから、まぁ、いいっか、と。

何てこと言ったら、これ以上奴らに何て言われるか分からないし。
しかも大輔が。
「甲斐の彼女。ヤバいくらい可愛いんだぞ?」
何て余計なことを言いやがるから。
何となく、何でもいいから買っとかないといけないような雰囲気になってしまって。



103  774  2004/07/08(Thu) 23:50

結局。
帰りの空港の免税店で。
大輔をむりやりつき合わせて。

つーか。
本当のことを言えば、何を買ったらいいかさっぱりわからない俺の代わり。
しびれを切らした大輔が、てきとーに選んだモノだったりするのだが。

日本円で10000円くらいだった、細いチェーンのブレスレット。
選んだのは大輔だけど。
さゆの細い腕に似合うだろうと思った。

いつも高価なアクセサリーを身につけているさゆには。
あんまりありがたくないかもしれんな、とも思った。

でも、大輔が。
「こんなもん、要は、気持ちだろ?」



104  774  2004/07/08(Thu) 23:52

確かに。
でも、何より。
とりあえず義理は果たした的な、安堵感は、あった。



「つけてみていい?」

美しい顔に満面の笑みを咲かせたさゆが言う。
俺は、ほんの少し、罪悪感。

「きれー」
土産のブレスレットを、細く白い手首にサラサラとすべらせて、さゆが言う。




105  774  2004/07/09(Fri) 00:02

でも、さゆのその笑顔と仕草に、俺はいたたまれない気持ちになる。
同じ手首に巻かれた、高価そうな腕時計。
それに比べて明らかに見劣りのする、安物のブレスレット。
貴金属の価値が全く分からない俺にだって分かる。

嬉しいフリなんて、しなければいいのに。

「本当に、うれしい。ありがとう」

こういう気持ち。
俺が間違ってるのか?



106  774  2004/07/09(Fri) 00:08
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規制ワードに頭にきたので更新以上。

海外有名高級貴金属メーカーの社名は英語だろうが半角スペース開けだろうがダメなのね。
まぁ、いいけど。

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107  名無しさん  2004/07/09(Fri) 00:27
あげ

108  名無しさん  2004/07/09(Fri) 19:21
53から再び、

高慢チキ女さゆ最高。774さんも楽しんで更新してるのは?
ここまで徹底してもらえると、こっちも笑みすら浮かべてしまう!

109  774  2004/07/09(Fri) 19:40

>107 名無しさん。
あげおおきに。

>108 名無しさん。
いつもありがとう。
憎憎しい女にしようと思えば思うほど、
さゆちゃんに歪んだ愛情を感じていることは秘密の方向で(笑)

どうにも本編ででてこなさそうな、
超どうでもいいプチ設定。

さゆちゃんの本名は小百合さんです。

んでは、更新。

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110  774  2004/07/09(Fri) 19:41

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やっと落ち着いたのは、7月も下旬にさしかかった頃だった。
腰の状態は、自分が思っていたより悪かった。
コートでの練習は禁止され、腰に負担をかけないウエイトトレーニングが中心の日々。
はっきり言ってつまらない。
1週間もすると、ボールに触りたくてたまらなくなった。

でも、無理するわけにはいかない。
分かっていた。
故障しないのもひとつの技術。
反対に言えば、故障なんか抱えてるのは、自分が未熟なせいだということ。
チームのフィジカルトレーナーと話し合い、まず、腰に負担のかからない体。
バランスのとれた筋肉を作り直すことから始めることにした。



111  774  2004/07/09(Fri) 19:41

11月になればVリーグも始まる。
それまでに焦らず体を作っていくこと。
それが俺の今の仕事だった。

でも……。
やっぱりつまらねぇ。

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そんなある日。

いつもと同じウエイトのメニューをこなして、真っ直ぐ帰宅。
ごろごろとテレビでも見ようか。

ところが。
テレビのリモコンが見つからなくて。
改めて、自分の部屋を見回して。



112  774  2004/07/09(Fri) 19:42

汚ねぇなぁ。

しょうがなく。
特に予定もないことだし。
掃除を始めた。

あちこちに脱ぎ散らかした服を集めていると。
ゴトリ。
両手に抱えた服の中から、何かが落ちた。

破れかけてくしゃくしゃになった小さな茶色の紙袋。
拾い上げようと、腰をかがめてかけて―――思い出した。





『んだよ、タバコ辞めるんじゃなかったのかよ?』



113  774  2004/07/09(Fri) 19:43

ブルガリアで、朝ホテルから会場に向かう前のほんのわずかな自由時間。
せっかく来たんだからと、大輔と一緒に散歩に出た。
知らない国で迷子にでもなったらしゃれになんねーし、ほんとにホテルの近くをぶらぶらとふたりで歩いただけだったけど、蚤の市みたいな小さなマーケットにでくわした。
見るともなしに露天の店を覗いてると、やたらけばけばしいガラス玉を一面に貼り付けたジッポのバタモンが目に付いた。
赤や黄色やの原色のガラス玉がキラキラ光ってて、趣味悪い。

ふと、リュウのことを思い出した。
はすっぱな態度でくわえタバコのリュウを。
この趣味の悪さ、アイツ喜びそーだな。



114  774  2004/07/09(Fri) 19:43

気が付いたら、金を払っていた。
そんなに高価なもんでもなかったし。
別に深く考えていなかった。
土産とか、そんなこと考えもしなかったし。
本気でアイツにやるつもりだったのかもよく分からない。

ただ、遠い異国の地で、アイツのことを思い出したのが。
自分で少しおかしかったから、なのかもしれない。

『俺のじゃねーよ』
『ふーん』



115  774  2004/07/09(Fri) 19:44

そして、それ以来、そのことはそれっきり。
きれいさっぱり忘れていた。



そういや、しばらく会ってねーなぁ。

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思いついて「小金ちゃん」に向かった。
思い出したら。
久しぶりにリュウと馬鹿話でもしたい気分になってた。

「いらっしゃい」



116  774  2004/07/09(Fri) 19:44

金造さんの声に迎えられて暖簾をくぐる。
店の中を見回す。
俺にぶつかってくるオンナも。
ピンクや赤や緑やらのありえない頭のオンナも。
いない。

「甲斐ちゃん、待ち合わせ?」
「いや、別に」

何を。
いつもここに居るわけじゃないのに。
会うことのほうが珍しいのに。
何で。
ここに着たら、アイツがいると思ったんだろう。

「いつものでいい?」
「うん」



117  774  2004/07/09(Fri) 19:45

目の前に出される俺のボトル。
ボトル。
……ボトル?

「金造さん、何か、コレ減ってない?」

けち臭いことを言うわけじゃないが。
この前来たときより、ずいぶん水位が下がっているような気がする。

「やっぱり……だまされてた」
金造さんがつぶやいた。
「?」
「リュウだよっ。アイツ、甲斐ちゃんがちょっとならいいって言ったって。ウチ来るたびちょこちょこちょこちょこ甲斐ちゃんのボトルから……」



118  774  2004/07/09(Fri) 19:46

あのくそガキ。

「おかしーなーとは思ったんだけどさ。甲斐ちゃんリュウのこと気に入ってるみたいだし」
「タダ酒飲ませるほどは気に入っとらん」
「ごめんごめん。アイツ、こーゆーことだけは悪知恵働くんだよなぁ」

謝りながらも金造さんは、笑いをかみ殺したような顔をしている。

「初めは胡散臭いなぁと思ったんだよ?でも、もうかれこれ1ヶ月くらい前から、リュウ、甲斐ちゃんのボトル飲んでるのに、甲斐ちゃんウチ来ても何も言わないから。あー、やっぱいいのかなーって」

金造さんの奥さんの美穂さんが横から口を出した。
にこにこと嬉しそうに。



119  774  2004/07/09(Fri) 19:46

「さすがリュウちゃん。甲斐くん、ぼーっとしてるから、ボトル減っても気が付かないこと読んでたのねぇ」

さすが美穂さん。
にこにこしながらひでぇこと言う。

確かに、気が付かなかった俺も俺だが。

「いや、でも、ごめんよ。ほんとに。次1本サービスするから」

申し訳なさそうに金造さんが言う。
でも。

いいこと思いついた。



120  774  2004/07/09(Fri) 19:47

「いや、それより。今度リュウが来たら……」

俺は金造さんに頼んで、空のボトルにみりんを入れて、俺の名前のプレートをかけてもらった。
人様の酒をちょろまかした罪を思い知れ。
悔い改めろ。
わははははは。

酒だと思って、俺のボトルからみりんを注いでいるリュウを。
嬉しそうに一気に飲み干して―――。
「だぁー」ってなってるリュウを思い浮かべて。



121  774  2004/07/09(Fri) 19:47

くくくくく。
笑いがとまらねぇ。


……俺って暗いか?


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「で、アイツ、ちょくちょく来てるんですか?」

「甲斐ちゃんほど頻繁でもないよ。生活苦しいみたいだからねぇ。金あるときか、誰かおごってくれる奴と一緒のときじゃないとこないみたいだなぁ」
「結構会ってないんで。どうしてんのかと」



122  774  2004/07/09(Fri) 19:48

言ってから。
そうか、俺、アイツのこと心配してたのか。
と気が付いた。

「まぁ、相変わらず無茶苦茶やってるみたいだけど。なんとか生きてはいるみたいよ?」
少し冗談めかして金造さんが言う。

その冗談に、またちょっと心配になる。

やたらケンカっぱやいアイツ。
会うたびに、バイトクビになっただの、家賃払えないだの言ってるアイツ。
欠食児童のような体。
どうやら一人で生活しているみたいだし。
あんなんじゃオトコもいなそーだし。
つーか、恋愛に興味ねぇとか言ってたし。
友達も多くなさそーだし。
音楽と酒のこと以外はどーでもいーみたいな態度だし。



123  774  2004/07/09(Fri) 19:53

本当に生きているんだろうか。
病気とかなったらどうするつもりなんだろうか。
つーか、その辺で倒れててもおかしくねーべ。

考えれば、考えるほど心配になってきた。

「どうした甲斐ちゃん?すんごく怖い顔になってるよ?」
金造さんに言われて、はっと我に返った。

「いや、怖い顔は生まれつきなんで」

でも、よく考えたら、俺はリュウの家も、レンラクサキも、何も知らない。
アイツの友達も知らない。共通の知り合いも、いるわけない。



124  774  2004/07/09(Fri) 19:54

まぁ。
単に飲み屋で仲良くなった飲み友達なんだから、そんなモンなのかもしれないけど。
でも、俺は。
結構いい友達だと思ってたけど。
リュウのこと何も知らない。

つーか。
俺はいろいろ話した気がする。
バレーのことも。チームのことも。
地元が宮崎だとか、弟が一人いるとか、玉子焼きが好きだとか。
普通に道を歩いてただけで過去3回職務質問されたことがあるとか。
中2のとき初めて女の子にもらったバレンタインのチョコレートが嬉しくて、食べないでとっといたらカビが生えて、かーさんに無理矢理捨てられたとか。



125  774  2004/07/09(Fri) 19:54

酔っ払いがピークに達してた時は。
バレーできんくなったらいつか居酒屋をやりたいとか。
そういうつまんない話まで、うっかり熱く語ってたような気がする。

でも。
リュウは。
ほとんど自分の話をしなかったような気がする。

何か。
何だかな。

「金造さん。何か書くモンありますか?」



126  774  2004/07/09(Fri) 19:55

俺は金造さんに借りたボールペンで、コースターの裏にこう書いた。



『俺様の酒をかっ食らったことを反省したか?
反省したら。
お前が、すごーーーーく
(すごーーーーーくだぞ?)
しんどいときは、ちょーーーーっとだけ
(ちょーーーーっとだけだぞ?)
俺様の酒、飲んでも許す。

礼はここにすれ↓
××× - ×××× - ××××』



127  774  2004/07/09(Fri) 19:56



「金造さーん。アイツがみりんかっ食らって「だぁー」ってなったら、これ渡しといてください」

金造さんは、そのメッセージを見て。
甲斐ちゃんも人がいいねぇ。
と笑った。



128  774  2004/07/09(Fri) 19:59
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更新以上。

切りどころがなくて、すげぇ大量更新になってシマタ。
お願い読んでね。
つーか。
クールでドライだったはずの甲斐のキャラが変わって来てないか?

まぁいいか。
今日は寝る前更新はないかも。

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129  名無しさん  2004/07/10(Sat) 02:27
やばいすごい面白いです!
他のみたいにきゃぴきゃぴ(私語)してなくて読みやすいし。
続き楽しみにしてます。


130  綾乃  2004/07/10(Sat) 03:05
とっても楽しかったです!!
これからも更新がんばってください☆
また遊びにきま〜す♪

131  774  2004/07/10(Sat) 19:36

>名無しさん。
ありがとうございます。
いや、実はもう年齢的にきゃぴきゃぴしたくてもできないので(笑)
楽しみにしてもらってると思うと励みになります。

>綾乃さん。
ありがとうございます。
話の展開が激遅いんですが、楽しんでいただけたでしょうか。
勢いがあるうちにがっつり書いてがっつり更新します。


一言の感想でもいいんで、もらえると、とても励みになります。
ってゆーか。
自己満足で書いてるくせに、リアクションがないとちょっと凹みます(笑)

きゃぴきゃぴしてないんで書き込みづらいかもしれませんが、
全然怖くないんで(笑)読んでいただいたら、ぜひ一言お願いします。

んでは、今日の更新。

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132  774  2004/07/10(Sat) 19:37

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<side R>

働けど働けど、わが暮らし楽にならず。
じっと手を見つめる。

見つめる。

見るめる。


………腹減ったなぁ。




133  774  2004/07/10(Sat) 19:39

深夜の倉庫で荷物の積み下ろし。
2、3、4日かぁ。
先週4日働いて。

収入3万3千円。

これで何とか今月の家賃、払える。
ちょっとはましなモンも食える。

眠い目を擦りながらの重労働。
汗にまみれて。
ふらふらになって。



134  774  2004/07/10(Sat) 19:39

帰ったら死んだように眠るだけ。
新しい曲を弾くことも。
新しい曲を書くことも。

愛しい音を聞くことすら億劫で。

でも。
それで。
手に入るものはたったこれっぽっち。

食べていくのは生きていくことよりつらい。
あの人が言ってたこと。
よく分かる。



135  774  2004/07/10(Sat) 19:40

生きていくために食べてるのか。
食べるために生きているのか。

わかんなくなっちゃうよ。


腹、減ったなぁ。


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あたしは、薄暗いアパートの部屋。
引きっぱなしの布団に寝転んで。



136  774  2004/07/10(Sat) 19:40

何もしてない。
息をしているだけなのに。
体がじっとり汗ばんでいる。

暑い。
日差しがないのに蒸し暑い部屋。

時計を眺めて。
6時まで、あと1時間。

6時になったら倉庫の事務所が開く。
6時になったら1週間分の給料が手に入る。

それをただじっと待ってる。
虫けらみたいに。



137  774  2004/07/10(Sat) 19:41

一昨日の夜、有り金全部飲んじゃって。
昨日から何にも食べてない。
腹が減ってるから、こんなダウンな気分になってんのかな。

なんか。
生きてくのがだりーみたいな。
生きてくことに意味がないみたいな。

こんな蒸し暑い部屋で。
何もない部屋で。
死んだように寝転がってると。

子供の頃のことを思い出しそうだ。
孤独で、みじめで、いつも怯えていた子供の頃。



138  774  2004/07/10(Sat) 19:41

あいつの。
母親のこと。



ダメだ。



あたしは、最後の力を振り絞るよう。
奥歯をかみ締めて起き上がった。

外に出よう。
町に出よう。



139  774  2004/07/10(Sat) 19:41

今立ち上がらないと。
でないと、多分。

あたし立ち上がれなくなる。

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ぼろアパートを出て。
外の熱気に頭がぐらぐらする。

暑さと空腹で足元もおぼつかない。
やべーな。
事務所までたどりつけっかな。



140  774  2004/07/10(Sat) 19:42

静かな住宅街を抜けて、駅前の商店街へ。
急ぎ足のサラリーマンと肩がぶつかって、倒れそうになる。
サラリーマンは、あたしのことチラっと見ただけで、足早に去っていく。

バカヤロー。
すみませんぐらい言えよ。

ガードレールに腰掛けて。
休憩。

タバコすいてー。
給料もらったら、とりあえずタバコ買お。



141  774  2004/07/10(Sat) 19:42

ぼんやり通りの向こうを眺めていると。
やたら体の大きな男が目に入った。
体の大きな坊主頭の男。

「カイ!!!」

自分の声に、自分でびっくりした。
そんな力、残ってたのかよってくらい。
でけー声。

多分。
嬉しかったんだ。



142  774  2004/07/10(Sat) 19:43

でも、通りの向こう側。
あたしの声に驚いたように振り返ったのは。

カイじゃなかった。

だよな。
カイがこんなとこいるはずねーか。

ちぇ。

アイツ、何やってんのかな。
最近、会ってねーな。
バレーボールやってんのかな。
そーれって。



143  774  2004/07/10(Sat) 19:43

アイツの。
凶悪なくせに、人のよさそうな。
笑うと、幸せな子供みたくなる。
顔が見たくなった。

給料もらったら。
小金ちゃんに行こう。



144  774  2004/07/10(Sat) 19:43

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「だあああああああああ」

あたしが口の中のクソあまったるい液体を噴き出した瞬間。
マスターと美穂さんがすげー勢いで笑い出した。

他のお客さんが呆気にとられて見ている。
ひーひー腹を抱えて笑ってる。

あたしは、顎から首に流れ落ちる、何だか気持ちどろっとした液体を手の甲でぬぐった。



145  774  2004/07/10(Sat) 19:44

んだよっ、これっ!

のどに引っかかる、変に甘い味。
背筋から脳髄まで痺れるくらい甘い。

「甲斐ちゃんの、酒、勝手に飲んでたバツだぁな」
マスターが、まだ収まらない笑いの隙間から言った。
「ほんとに、ほんとに「だぁー」って、なった」
美穂さんが涙を流しながら言う。

ちきしょう。
とうとうばれたか。



146  774  2004/07/10(Sat) 19:44

「つーか、何なんだよ、コレ」

カイの名前のプレートのかかった焼酎のビン。
まだ底に残ってる液体を恐る恐る覗き込み、においを嗅ぐ。
体に悪いもんじゃねーんだろーな。

「みりんだよ」
「みりん?」

くっそ、味な真似するじゃねーか、あのウミボーズ。

「最初、酢にしようかって言ったんだけど、甲斐くんが、酢は匂いでバレるからみりんにしようって。甲斐くんって顔に似合わず賢いのねぇ」
「美穂さん、それ、ほめてねーから」



147  774  2004/07/10(Sat) 19:45

くっそ。
こんなくだらない、手の込んだイタズラしながら。
にやにやにやにや笑ってるカイの顔が目に浮かぶぜ。

つーか、アイツ意外に根が暗いな。

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事務所で給料もらって。
その足で真っ直ぐ「小金ちゃん」にやってきて。

何でだろう。
ここにくればカイに会えると思ってたけど。



148  774  2004/07/10(Sat) 19:45

ちぇっ。
別に約束してたわけじゃなし。
いるわけないないよな。

折角。
金入ったし。
おごってやってもいいかなとか思ってたのに。

いつもタダ酒飲ませてもらってるしな。

んだよ。
何やってんだよアイツ。
ムカつくな。



149  774  2004/07/10(Sat) 19:46

なんてな。
勝手に肩透かしを食った気分になって。
腹いせに、アイツの酒飲んでやるって思って。


で、みりん、だよ。
ちきしょう、やられたぜ。


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「反省した?」
まだ、どこかニヤニヤ顔のマスターが言った。



150  774  2004/07/10(Sat) 19:46

「うるせー」

「リュウが反省したらコレ見せろって、甲斐ちゃんに言われてるんだけどな」
マスターは店のコースターをひらひらさせた。
「んだよ。それ」

「甲斐ちゃんからのメッセージ」

マスターはそのコースターをあたしの目の前に置いた。
そっと裏返す。

アイツらしい。
角ばって汚い字。



151  774  2004/07/10(Sat) 19:46




「……………」






152  774  2004/07/10(Sat) 19:47

んだよ。
んだよ、コレ。

マスターと美穂さんが、多分ニヤニヤ顔からニコニコ顔に変わって、このメッセージを読んでるあたしのこと、見てるのがわかる。

ちきしょう。
んだよ。

だから、顔が上げられない。
どんな顔、していいのか。
わかんねー、よ。



153  774  2004/07/10(Sat) 19:47

んだよ。
カイのヤロー。



あたしは。
人に優しくされんの。
慣れてないんだよ。



ことん。

うつむいて、まるで、多分、親の敵みたいに、コースターを睨みつけてるあたしの前に、マスターが店の電話の子機を置いた。

「ちゃんと、甲斐ちゃんに、お礼言いなぁ」



154  774  2004/07/10(Sat) 19:50
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更新以上。

そろそろストックがやばげ。
更新速度落ちたらごめん。

こんな私に叱咤激励よろー。

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155  奈々  2004/07/10(Sat) 20:11

初めまして♪奈々です。
774さんの小説は、今日始めて読んだんですけど、
文章力??が凄いですよね!!尊敬です。
奈々もこんな風にしたかったのに、
なんかそれらしい言葉が出てこないっていうか…。涙

この小説は甲斐さんの『かっこいい感じ』が伝わってきます。
コースターのメッセージは『可愛い感じ』でしたけどね。笑

これからもまたちょくちょくカキコしていいですか!?
それではこのへんで…♪

156  タマ  2004/07/10(Sat) 20:53
ピリッと辛口な文章がとっても魅力!

性悪女さゆの名前が『小百合』だったというプチ設定が
なんだかツボでした。
友達食いを目論む女だもの、このまま終わってくれるはずがない!
と、とんでもなく期待してます。

ストックがしがし溜めて更新してくれるのを
萌える準備を整えて心待ちにしてます。


157  綾乃  2004/07/11(Sun) 02:18
甲斐さんみりん大成功でしたね〜♪
美穂さんのキャラ最高!!悪気なく普通に言ってるのがナイスです☆
仲良しのマスターと美穂さんの出会いが気になってます笑
個人的になんで気にしないで下さい・・・。

マイペースに更新頑張ってください♪


158  ren  2004/07/11(Sun) 11:45
ここの板ではめずらしくhardな感じだけど、
すごく良いです。甲斐さんっぽさがよく出てるし
周りのキャラの濃さも面白いし。
更新頑張ってください!
早く萌えたいです(笑)

159  774  2004/07/11(Sun) 12:25
すごい。
自分で催促しといてなんですが(笑)感想いただけてめっさ嬉しげです。

>奈々さん。
ありがとうございます。
文章力は多分、単に年を食ってるので無駄に言葉を知ってるだけだと思います。
ねーさんぶって言わせて貰うと、いっぱい本読んだり、映画みたり、音楽聞いたりして気に入ったフレーズを頂いちゃったりするといいですよ。
(もちろん丸パクはだめですけどね)
奈々さんの小説も教えてください。また遊びに伺います。

>タマさん。
ありがとうございます。
何気に小百合さん大人気です(笑)
プチ設定2としては小百合さんの髪型は多分名古屋巻きです(笑)
小百合さんの暗躍は多分3話目で……。

ところで、タマさんは、ひょっとして「こんな話」のタマさんでしょうか?

>綾乃さん。
いつもありがとうございます。
みりん云々は自分でも予定外のエピソードだったけど気に入ってます。
甲斐って意外に根が暗そうですもんね(失礼)
美穂さんみたいな人っていますよね。自覚症状のない失礼な奴(笑)

>renさん。
ありがとうございます。
実は自分もまだ甲斐ファンになったばかりで。甲斐のキャラクターについては非常に悩みながら書いてます。
だから甲斐っぽいって言ってもらえるとごっつ嬉しいです。
もっともっと自分の中の甲斐像を文章にできるといいのですが。


160  774  2004/07/11(Sun) 12:28

それでは。
話の切どころがなかったので、プチ更新です。
多分夜にもう少し多めに更新します。

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161  774  2004/07/11(Sun) 12:29

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<side K>

そん時、俺はさゆと会ってた。
ベタに、映画見て。
こじゃれたエスニック料理の居酒屋で飯食って。

そろそろ、次、どうしよっか。



162  774  2004/07/11(Sun) 12:29

っていう、一番苦手な。
自分が帰りたいのか、もっとさゆと居たいのか。
さゆが帰りたいのか、もっと俺と居たいのか。
よくわかんなくて。
つってもこの後行くところっていったら、ホテルぐらいのもんだし。
わざわざ「これからどうする?」なんて聞くのも白々しいし。
そーゆーこと考えてっと、何かもうどーでもよくなって。
面倒になって。
結局帰りたくなって。
でも、帰りたいとかいうとさゆに悪いかなとか。
ぐじゃぐじゃぐじゃぐじゃ考えて。
口数もより一層少なめになって。
気まずい雰囲気になってるとき。



163  774  2004/07/11(Sun) 12:30

ポケットの中の携帯がブルブルと震えた。
とりあえずディスプレイを確認する。

『小金ちゃん』

小金ちゃん?

なんで小金ちゃんから電話がかかってくるんだ?
思わず、通話ボタンを押した。


『ふざけんなぶっころす』


聞こえてきたのは、地を這うような声。
電話の声を聞くのは初めてだけど。
すぐにわかる。
リュウの声。



164  774  2004/07/11(Sun) 12:30

思わず笑ってしまった。

『笑ってんじゃねーよ』
「そのまえに何か言うことがあんじゃねーの?」
『あー?』
「あー?じゃねぇよ。申し訳ありませんでした甲斐様、海よりも深く反省しておりますのでどうかお許しください。だろ?」
『馬鹿じゃねーの?』
「んだと?」
『つーかさ、んなことどーでもいーから。奢ってやっから小金ちゃん、来いよ』
「あ?」



165  774  2004/07/11(Sun) 12:35

思わず、はなしながら隣のさゆの顔を見てしまった。
さゆは、さも「何にも聞いてないよ」みたいな顔をして、そっぽを向いて、目の前のグラスを指先でもてあそんでいた。

微妙な間が開いてしまった。

「今日は―――」
『じゃ、別にいーよ』

その、リュウの即答に、ちょっと腹が立った。



166  774  2004/07/11(Sun) 12:36

「行くよ」
『くんのかよ?』
「悪いかよ?」
『別に』

「待ってろよ」

リュウの返事を待たずに、電話を切った。
それから、さゆを、もう一度見る。

何だろう?
遠くを見ている、さゆの綺麗な横顔が。
一瞬、何か。

ちょっと怖かった。



167  774  2004/07/11(Sun) 12:36

俺が、さゆの横顔を見ながら、言葉を探していると。
ちゃんと。
多分、俺が見ていることを分かってて。
ゆっくりと、俺の方に顔を向ける。

まぶしい程の笑顔で。

「どうしたの?」
優しい口調で。

「いや。よく行く飲み屋の、飲み友達で。リュウって奴がいて。すげぇめちゃくちゃな奴なんだけど、面白い奴でさ。んで……」



168  774  2004/07/11(Sun) 12:37

「いいよ。行くの?」

「悪い。最近ずっと会ってなかったからさ」
「いいってば」

本当に、聖母のような微笑。
綺麗な指を伸ばしてそっと俺の頬に触れる。

「飲みすぎたら、ダメだよ」

その場所が、ほんの少し、痺れた。



169  774  2004/07/11(Sun) 12:38
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更新以上。

やっと甲斐とリュウが会えるみたいです。
てゆーか会ってくれないとラブストーリーになりませんがな。

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170  奈々  2004/07/11(Sun) 13:02

わっ!!また再新されてますね♪

奈々なんかは全然言葉(単語??)がでてこないんで…
本なんかはたまに見るぐらいです。
学校で朝読書の時間(10分)があるので、それで読むくらいです。

奈々の小説ですかぁ。ヤバイですよ。笑
『夢を叶えよう…〜男子バレーボール選手〜』
みたいな感じです。(みたいなって!!笑)

奈々の事呼びタメでお願いします♪

171  紅椿  2004/07/11(Sun) 13:39
初めまして。最初から一気に読んでしまいました。
こんなクールな小説、初めてで凄く新鮮です。
どの小説もそうですけど、選手の性格って
作者の想像でしかないんですよね。
でもココの甲斐クンは「本物っぽい」と
つい思ってしまいます。素敵です(笑)
他の小説とかで、よく細川さんがブッ飛んでますけど
本物はあんなじゃないって・・・(笑)
ココは何故か現実味があって良いです。
甲斐クンが飲み屋でヒロインと会う。
うん、ありそう(笑)
これからも読みに来ます。頑張って下さい。

172  タマ  2004/07/11(Sun) 19:34
ふふふ。さゆの暗躍、楽しみにしてます。
ここまで(甲斐選手の前で)演じきれるってある意味すごいですよね。
実はかつてこういう女が身近にいました。
しかも名前も『小百合』で(笑)

あ、そうです。「こんな話」で
拙い文章晒して妄想劇場繰り広げてるタマです。とほ。
名前を見かけていただけてたなんてすごく光栄です〜。



173  774  2004/07/11(Sun) 21:09

ただいま少し酔っ払っております。てへ。

>奈々ちゃん。
ありがとうございます。
んでは、お言葉に甘えましてちゃん付けで。
自分でもありますよー。ぴったり来る言葉が出てこなくてのたうち回ることが。
あとで奈々ちゃんのスレにもお邪魔しますね〜。

>紅椿さん。
ありがとうございます。
本物っぽいと言っていただけると作者冥利に尽きます。
なんせOQT以降のファンですので。妄想パワーで突き進むだけでございます。
ぜひこれ以降も読んでいただけるよう精進いたします。

>タマさん。
ありがとうございます。
あんなキャラが身近に!人間観察が趣味な自分としてはうらやましい限りです(笑)
只今、いかにタマさんに「きー。この女むかつくー!」と思ってもらおうか必死に画策ちゅうでございます。
「こんな話」は毎日死ぬほど更新を楽しみにしておりまして。
タマさんからの書き込みを頂いて喜び勇んでそちらのスレにお邪魔しようかと思ったのですが。
万一人違いだったら死ぬほどアホくさいので、と踏みとどまりました。これで安心して遊びにいけます(笑)

んでは。更新。

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174  774  2004/07/11(Sun) 21:10

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久しぶりに見る、リュウの頭は、金色だった。
いつもみたい、ガチガチに立ってなくて。
長めの前髪が目にかかって、うっとうしそうで。

ちょっと、いつもより子供っぽかった。

「よう、酒ドロボウ」
ぱしん。
リュウの頭を軽くはたいて隣に座る。

「んだよ、根暗オトコ」
俺を見上げる。

あれ?こいつこんな顔だっけか?



175  774  2004/07/11(Sun) 21:10

「ウマかったか?みりん」
「あたしはなー、甘いもんが大っ嫌いなんだよっ」
「それはよかった」

そうか、今日は、あの不気味な化粧をしてないんだ。

「今日、何か、用があったんじゃねーのか?」
「ああ、デート」
「デートぉ?」

リュウはげらげらと笑った。

「何がおかしいんだよ」
「カイみたいにぬぼーっとしたオトコに捕まるオンナもいるんだ」
「るせぇ」



176  774  2004/07/11(Sun) 21:14

髪を立ててなくても。
化粧をしてなくても。

袖を切ったブロックチ ェ ッ クのシャツに。
膝で切ったジーンズに。
このクソ暑いのに、ごついワークブーツに。

椅子の上にひざを立てて。
くわえタバコで。
きつい大きな目で。

俺を見上げる態度は。
充分、悪そうで。
生意気そうで。
反抗的で。

でも、少し、寂しそうだ。



177  774  2004/07/11(Sun) 21:15

「何かあったのか?」
「あ?」
「元気ねぇんじゃね?」

リュウは俺を見て。
そのでかい目で、じっと俺を見上げて。
それから、へへへ、と笑った。

「暑いからじゃね?つーかさ、タダでさえ暑いのに、カイがいると余計暑苦しいよな。でけーし」
「るせぇよ」

「バイト決まったのか?」
「あー、まぁな。週払いの。深夜に倉庫で荷物の積み下ろし。キツイぜぇ」



178  774  2004/07/11(Sun) 21:15

へらへら笑いながら。
そういわれると、もともと薄っぺらいリュウの体が、より一層薄っぺらくなったような気がした。

「大丈夫なのか?そんなの。ちゃんと食ってるのか?」

リュウは、やっぱり俺をじっと見る。
それは、多分、苛立ったような目で。

「んで?」
「あ?」
「何でそんなこと聞くんだ?」

その、苛立ったようなリュウの目は、相変わらず俺を凝視している。
真っ直ぐに。
普通の大人は、そんな風に他人のことをまっすぐ見たりしない。
そんな風に他人を見るのは赤ん坊だけだ。



179  774  2004/07/11(Sun) 21:15

だから。
俺は急に。
何ていうか。

気恥ずかしいとも違うし。
やましい気分って訳でもない。

そう、多分、少しとまどってしまって。
リュウの視線を、どうしていいかわからなくて。
ひどく、居心地の悪いような気がして。

目をそらしてしまった。



180  774  2004/07/11(Sun) 21:16

「まぁ、いいや」
リュウは素っ気無く言って。
また、薄く笑ったみたいだった。



「でも、カイも痩せただろ?」

ほんの少し、トーンを上げてリュウが言った。
話題を変えるみたいに。

「ええ?ああ、まぁ」

OQTからワールドリーグにかけて、かなり無理をしてしまった。
スケジュールもきつかったし。
精神的にも、少し、追い詰められてたのもあったし。
食べれなくなって、結構体重も落ちてしまって。
気持ちはあるのに、体がついていかないという状況を、初めて体験した。
もう気持ちだけでやれる年齢じゃなくなったことにも気づいた。
今、体作りに専念しているのには、そんな理由もあった。



181  774  2004/07/11(Sun) 21:16

「試合してきたんだろ?よかったな」
「何が?」
「いい試合だったんじゃねーのか?」

「負け続きだよ。散々。何にもよかねーよ」
「ふーん」

リュウの気のなさそうな返事。
俺はリュウを見返した。

やっぱりリュウは。
ありえないほど、真っ直ぐに俺を見ていた。

「何でだよ」
「何が?」
「何でいいゲームだったって思ったんだよ」



182  774  2004/07/11(Sun) 21:17

「ちょっと、いい顔になったからさ」

やっとリュウは。
目の中の苛立ちを消した。

そして。
少しだけ。
ほんの少しだけ。

優しさというか。
親密さというか。

そういうのが、リュウのでかい目の中に宿ったような気がした。


「ちょっと、「オトコ」の顔になったな、と思ってさ」




183  774  2004/07/11(Sun) 21:17

何でリュウに分かる?
バレーが何人でやるスポーツかも知らないような奴なのに。
俺がどんな思いでワールドリーグを戦ってきたかも話してもないのに。
俺の中の変化は。
俺しか知らなかったはずなのに。

「何だよ、それ」
「さぁな。そう思っただけだよ」

リュウになら分かるんだろう。
こんなに、でかい目で。
こんなに、真っ直ぐ見ていたら。
すぐに目をそらしてしまう普通の大人には、見えないものが。
きっと、リュウには見えるんだろう。



184  774  2004/07/11(Sun) 21:17

「生意気いってんじゃねーよ」
俺は、そんな風に。
リュウの頭を小突いて。
茶化した返事しか、できなかったけど。

ワールドリーグでの俺を。
心配してくれた人はたくさんいたけど。


褒めてくれたのは、リュウだけだった。


そして。
嬉し、かった。



185  774  2004/07/11(Sun) 21:18

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<side R>

久しぶりに見たカイは。
ちょっと痩せて。
坊主頭がイガグリみたくなってて。

ちょっと目が鋭くなってた。

なんてーか。
言うなれば。
コソドロから、強盗犯に昇格っつーか。
チンピラから、バッチ貰って幹部に昇格っつーか。
3年お勤めしてハクつけて戻ってきたっつーか。



186  774  2004/07/11(Sun) 21:18

まぁ、それなりにでかい経験してきたみたいな。
そんな顔になってた。

ああ、こいつもがんばってんだなって思った。

カイはいい。
いい奴だと思う。

顔は凶悪犯だけど。
でも。
絶対、人を傷つけたことないような笑顔をしてる。
あんまり、人に傷つけられたこともないような笑顔をしてる。

ぽかぽかと、小春日和の太陽みたいな奴だ。



187  774  2004/07/11(Sun) 21:19

いい人間に、真っ直ぐ育てられたみたいな。
穏やかで、真摯で、暖かい態度。
きちんと人と接することができて。
きちんと人に優しくすることができる。

そして。

それは、全部、全部。
あたしの持っていないものだ。

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「で、おとーと。どーなった?おとーと」

ふたりとも、いーかんじに酒が回ってきた頃。
あたしはふと思い出してカイに聞いた。



188  774  2004/07/11(Sun) 21:19

カイの弟も大学でバレーをやっているらしくって。
でもカイとは正反対で。
カイいわく、チャラチャラしてて女にだらしがない。
本当に「しょーがない」奴らしい。

でも、カイは、そんな弟が可愛くてしょうがないみたいで。
あたしはカイの弟の話を聞くのが好きだった。

「ああ、もうめちゃくちゃ。その二股かけてた女同士が、鉢合わせしたらしくて」
「うひゃ。最悪」
「泣くわ喚くわの修羅場で、でも、アイツ、その修羅場の最中に、俺にメール入れてくんだよ。『にーちゃん、すげぇ。ウチ今ドラマみてぇ』って」
「ぎゃははははは」
「しかも、それ、俺ちょうど、ワールドリーグのフランス戦の直前で。しらねぇよっつーの。つーか、それどころじゃねーよ。みてーな」
「でも返事したんだろ?」
「刺されてしまえ、ってな。」
「ひでー兄貴だなぁ」
「ばーか、あっちが悪いべ?んで、何とかなだめすかして、とりあえず一人部屋においといて、もう一人を家に送ってって。んで、自分の部屋帰ってきたら、部屋においといた方が、部屋中に小麦粉撒き散らして消えてたんだと。『にーちゃん、俺の部屋、真っ白だぜー。気分は雪国だぜー。見に来いよ』行けねーよ。俺、試合中だよ。スパイク打ってっよ。しかも見たくねぇよ」



189  774  2004/07/11(Sun) 21:20

あたしはその話に腹を抱えて笑う。
カイも笑う。

カイ自身にも。
カイの周りにも。
負のイメージは全くない。

あたしの周りには、カイみたいな奴はいない。
明るい太陽の下でも、なにも隠さなくていい。
あたしみたい、俯かなくてもいい。
そんな奴はいなかった。

だから、あたしはカイの話を聞くのが好きだ。
生ぬるいホームドラマを見ているみたいに。
小学生のとき、図書館で読んだ童話みたいに。

遠い憧憬。

そして、ほんの少し。
きっと、嫉妬。



190  774  2004/07/11(Sun) 21:20

カイは。
あたしの思う「幸せ」の象徴なのかもしれない。

でもそれは。
絶対、あたしの手には入らないものなんだ。

だから。

「リュウは兄弟いないのか?」

あたしの話は聞かなくていい。
カイに話せるような話もない。

「いねーよ」



191  774  2004/07/11(Sun) 21:20

ソッポを向いて答える。
カイはきっと、しつこくは聞いてこない。
あたしの中に入って来なくていい。
あたしの中には何にもないから。
欲求不満と苛立ちでバクハツしそうになってる。
虫けらみたいなあたししかないから。

ただ、寒くて。
こんな、暑いのに。
心ん中が、寒くてしょーがないとき。

ほんの一時。
あたしが温まりに来る。

カイはそんな友達でいい。



192  774  2004/07/11(Sun) 21:24
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更新以上。

甲斐の弟が亜細亜大学でバレーやってるのは本当の話です。
でも、多分、断じてこんなお茶目なキャラではないハズです。
ごめん。甲斐弟。

このまま男女を越えた友情物語になりそうなヨカーンに。
ビビりまくりでございます。

恋…。
恋してくれよ。

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193  奈々  2004/07/11(Sun) 21:29

普通に『奈々』って呼び捨てでいいですよ♪

甲斐さんの弟さん…バレーやってるんですか!?
奈々的に弟さんのキャラ大好きです☆★
メールの内容とかかなりノーテンキな感じで。
弟さんの顔、どんな感じなんでしょう!?
やはり兄弟、ごっつかったりしちゃうんですかね。爆
あー、是非見てみたいです♪笑

なんか小麦粉とか凄いですよ…。笑
思いつきませんもんwww
さすがかっこいいですわぁ〜。(感心)

あ、ワールドグランプリ見ましたか!?


194  ゆう  2004/07/11(Sun) 22:48
いやー、いつも読んでます、こっそり。お邪魔します。
いいですね、甲斐くん、リュウ、そしてさゆ!
どんな魔性ぶりを見せてくれるか楽しみです。
甲斐くんの弟さん、いいキャラです!
実際の甲斐弟さん、何かの大学の大会で、一年生の時新人賞獲ってましたね。
しかもその年の猛打賞は甲斐兄でした。兄弟そろって凄いです。
どんなお顔なのかは覚えてませんが・・・
話それてすみません。
いつリュウが甲斐くんに心許すんでしょうか。
それとも許さないのか・・・?
恋愛になるのか?友達止まりなのか。
続きが気になってしょーがありません。
またお邪魔します。

195  くらげ  2004/07/12(Mon) 01:56
どうも〜。129の名無しです。名前つけました。(笑)
私もきゃぴきゃぴ出来ない年齢なんでいい感じです。
何かリアルにありえそうな(ないから)感じで選手のイメージが
全然壊れないので入りやすいんです。(ほめすぎ?!笑)
甲斐弟くんは有名人ですよねー。何か・・・濃い顔です。
あんなキャラだったらいいな!!
恋も見たいが恋を超えた友情も悪くない・・・続き楽しみにしてます♪


196  名無しさん  2004/07/12(Mon) 10:49
108から懲りずに参上

最恐VS性悪。サイコーサイコー!ゴー!ゴー!
第一ラウンドは事実上、最恐ヒロインの勝ちだけど
別れ際に彼氏の頬に呪いをかける性悪もぬかりはないね!
恋の行方よりこっちの闘いに目が離せない自分は
巷を騒がす「負け犬」になる可能性が日々高まってゆく…

197  名無しさん  2004/07/12(Mon) 11:04
↑あげ↑☆↑あげ↑

198  774  2004/07/12(Mon) 21:25
タカラジェンヌクライシスでございます。
モチベーション…モチベーション……。

>奈々ぽん。
いつもありがとうございます。
わたしは甲斐弟を見たことないけど。
どこぞで「甲斐(兄)をちゃらくしたかんじ」みたいな書き込みを見かけたので。
わたしも一度見てみたいです。
あ、あとワールドグランプリは気がついたら終わってましたね。
男子のフルセット病が感染してないことを祈っております(笑)

>ゆうさん。
ありがとうございます。
いやー、わたしもOQT以降のニワカなんで(笑)実はよく知らないんですけどね。
「甲斐 弟 バレー」でぐぐったら出てきたもので。使わせていただいた次第です。
わたしも早く甲斐に心を開くリュウを見たいのですが、何せ作者と同じひねくれモノで(笑)
なかなか素直になってくれませんが。お付き合いいただけるとうれしげです。

>くらげさん。
いつもありがとうございます。
名前が!名前がついたんですねー(笑)
しかもきゃぴきゃぴが許されない年齢とは。「同士よ!」という感じです(笑)
いや、でも、ねーさんそんなに褒められると天狗になってしまいそうです。
リアル甲斐を見習って謙虚に謙虚にがんがります。




199  774  2004/07/12(Mon) 21:33

>名無しさん。
いつもありがとうございます。
『別れ際に彼氏の頬に呪いをかける性悪!!!!』
確かにその通りでございます。面白すぎでございます。
そうか、あれは呪いだったのか。
その呪いのせいかどうかは作者にも計り知れないのですが。
この後甲斐は確かにえらい目にあいます。大変です。
なんて軽くネタばらししちゃったりして(笑)

>名無しさん。
あげおおきに。

大人気の甲斐弟くんですが。
雑誌の甲斐母のインタビューで。
「甲斐(兄)は一人目だったのでかなり厳しく育てたが、
弟はほったらかしだったためえらいやんちゃな子になってしまった」
というのを見て。
甲斐(兄)と正反対のキャラだったら面白いな、と思って。
あんな子(笑)になってしまいました。

それでは。
本日の更新。

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200  774  2004/07/12(Mon) 21:34

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<side K>

そして、俺達はぐずぐずに酔っ払っていった。
食って飲んで話して。
食って飲んで笑って。

今日も金造さんに追い出される。
もう閉店するから。
頼むから帰ってくれと。

小金ちゃんを出るとき。
俺達はちょっともめた。
どちらが金を払うか。



201  774  2004/07/12(Mon) 21:34

リュウは自分が払うと言ってきかず。
かといって、こんな貧乏な奴におごられるのも気が引けて。

「んでだよ。今日は金持ってんだよ」
「いーよ。他のことに使えよ」
「いつも奢られっぱなしじゃ、ヤなんだよ」

勝手に人の酒飲んでたくせに。

「んで、素直に甘えられねーんだよ」
俺が言うと。
リュウは噛み付きそうな顔をした。
ケンカになる、と思ったとき。
金造さんが絶妙なタイミングで割り込んできた。

「今日はリュウからもらうよ」



202  774  2004/07/12(Mon) 21:35

そう言って、金造さんが出した伝票の金額は。
大酒のみが二人でしこたまかっくらったにしては。
全然、足りない金額だった。

俺は、こういう人間になりたいと思った。
さりげなく。
リュウのような人間を甘えさせれる。
懐の深い人間に。

店を出て。
時間は夜中の2時を回ってた。

さすがに、飲んだな。



203  774  2004/07/12(Mon) 21:35

エアコンの効いていた店内から足を踏み出すと。
真夜中とは言え、じっとりと、重さを感じるような夏の熱気に包まれた。
今夜も熱帯夜。

「あちー」
俺が言うと、リュウは俺を見上げて言った。

「あちーよ。つーか、お前が暑苦しい。でかい。うざい」

座って、二人並んで飲んでても、全然目線が違って。
ことあるごとにリュウは、俺を、でかいだのうざいだの暑苦しいだのとけなした。
「おめーと飲んでっと、首がいてーよ」
そんな風に言ってた。



204  774  2004/07/12(Mon) 21:36

だけど、立って並ぶと。
より一層。
笑えるくらい。

俺の肩口に、リュウの頭。
しかも俺はガタイがいい。
顔もでかい。

それに比べて。
リュウはどうだ。
とても女とは思えないぺらぺらの体。
握りつぶせそうな小さな頭。

二人並んだ姿を、ショーウィンドーに見て。

なんだこれ。
すでに遠近感がおかしい。



205  774  2004/07/12(Mon) 21:36

「リュウこそ。ちょろちょろしてっと、踏み潰すったい」

リュウがゲラゲラ笑った。
「カイ、相当酔ってる」
「何と?」
「九州弁、出てる」

「そげんこと―――」

言いかけて止めた。
ホントだ。
出てる。

「カイ、酔うと時々九州弁になるんだよな。かーわーいいなぁ」
「うるせぇ」



206  774  2004/07/12(Mon) 21:37

リュウは、少し遠くを見て。
「でも、あたし、九州弁好き」
「はぁ?」
「何かいいじゃん。あったかくってさ」

でも、そう言ったリュウの顔はどことなく。
嬉しそうでもあり。
でも、寂しそうだった。

「何、言っとう。―――これから、どげんすると?」
何となく、並んで歩き出しながら聞く。

「帰るよ、もちろん」
「どげんして?もう電車、走っとらん」

自分で、バリバリの宮崎弁でしゃべってること分かってるけど。
すでに、制御不能。



207  774  2004/07/12(Mon) 21:37

「歩いて。カイは?」
「寮、すぐそこやけん。歩いて10分くらい。リュウん家は?」
「なかもず」

「なかもずて。二駅も向こうやなかと!」

「2時間もあれば着くよ」
「タクシーば乗れ」
「もったいねー」

しれっと言うリュウ。

確かに、俺から見ればリュウはこれっぽっちも女には見えねぇ。
でも、はたから見れば、男ではないことくらいわかる。
ガラ悪かろーが。
乳がなかろーが。
女をこんな時間に、2時間も歩いて帰らせるわけにはいかない。



208  774  2004/07/12(Mon) 21:39

「あほが。危なかろーが」
「るっさいなぁ。平気だって言ってんだろ」
「いかん」

どうも、酒のせいと。
宮崎弁に戻ってしまったおかげで。
頑固になってしまったようだ。

リュウが噛み付きそうな顔で俺をにらみつける。

「あたしが歩こーが、走ろーが、あたしの勝手なんだよ。干渉すんじゃねーよ」

ぐっ。
ここは我慢だ。
金造さんみたいに懐の深い人間になるんだ、祐之。



209  774  2004/07/12(Mon) 21:39

「わかった」
「んだよ。不動明王みてーな顔しやがって」
「うちに来い」

やっぱり、酔ってる。
俺はすごく酔ってる。

この不良を自分の部屋に連れて行こうとしてるなんて。
普通のアパートじゃないんだぞ。
社員寮なんだぞ。
分かってるのか、祐之。

「何言ってんの?」
「いいけん。お前に渡そうと思っとったモンもあるけん」

リュウは心持ち、不審そうな、心配そうな顔をしてみせた。
「大丈夫か?お前」



210  774  2004/07/12(Mon) 21:41

「やかましか。着いて来い」

俺が寮に向かって歩き出すと。
リュウは、ほんの少し、迷ったみたいで。
でも、俺の後ろをついてきた。

無言で、歩く。

別にリュウを連れてったってどーってことない。
友達を連れてきたり、女を連れ込んでる奴だってたくさんいる。
学生じゃねーんだ。
何も悪いことじゃねぇ。
しかも、別にリュウとどーこーしようってワケでもねーんだから。

「んがっ」

なんて考えながら歩いていたら。
つんのめってよろけた。



211  774  2004/07/12(Mon) 21:41

後ろからリュウの笑い声が響く。

「だせぇ。おまえ本当にスポーツ選手かよ。何にもねーとこでコケてんじゃねーよ。しかもなんだよ「んがっ」って。」

「うるせー」

「つーかさ。お前動き遅いよな。テキパキ動いてるとこ見たことねーもんな。ぼーっとしてっか、酔っ払ってでろでろになってっかどっちかだもんな。お前がバレーやってる姿、想像つかねーもん」

「だまりんしゃい」



212  774  2004/07/12(Mon) 21:42

寝静まった町。
時々行き交う車以外、動いているものもない。
静かなアーケード。
ずらっと並ぶ汚れたシャッターの町並み。
やたらと俺達の足音が響く。
電信柱の脇に積み上げられたゴミの山。
夏特有の、どこか生臭い空気の匂い。
どこか遠くで猫が、一声鳴いた。

その中を歩く。
俺の2歩後ろに、リュウ。

俺の後頭部に向かって、憎まれ口を叩き続けるリュウ。
振り向かずに答える俺。



213  774  2004/07/12(Mon) 21:42

奇妙にアンバランスで。
奇妙に気の合う二人。
寝静まった町を歩いていく。

「おまえん家、風呂あるか?」
「ふつーあるだろ?」

「あたしん家にはねーんだよ」
「びんぼーにん」

「風呂入らせろ」
「好きにすればよか」

妙に幸せな気分だった。



214  774  2004/07/12(Mon) 21:47
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更新以上。

すみません。
甲斐の喋ってるのは実は宮崎弁ではなくて博多弁です。
だって宮崎弁ってどんなのかわかんねーんだもん。
しかも自分もネイティブじゃないので、この博多弁もかなり胡散臭いです。

………。
タカラジェンヌ、かぁ……。

↑今このことで頭がいっぱいの模様です。

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215  タマ  2004/07/12(Mon) 21:53
再びどころか再三お邪魔いたします。
なんかすごくいいですね。お互い離れてるとシビアな視点なのに
二人でいるとどこかコミカルな感じで。
読みながら一人にやけるあたしは立派に不審人物です。あぁどうしよう。

読んでいただけてるなんてすごく光栄です。
なにげにあたしも「きゃぴきゃぴできない年齢」ですが
頭の悪さ晒して恥知らず状態。うげ。

さゆをあたしの知人『小百合』に見立てて
ハラワタ煮えくり返る思いを期待しつつ
リュウにこてんぱんにやられてくれるのも楽しみにしてます(笑)


216  奈々  2004/07/12(Mon) 22:06
『奈々ぽん』って。笑 素敵やないですかぁ♪
初めてぽん付けられましたよ。爆

いつもお邪魔しちゃって…すんません;;
それより、200突破しましたねぇ♪
おめでとうございまーす☆★

今日は山本さんの誕生日ですよね!!
そして土曜日は…『甲斐さま』誕生日ですわ♪
土曜日には、部活があるので、部活の友達と
こっそりと誕生日祝っておきます。笑

それでは…。

217  ゆう  2004/07/12(Mon) 22:25
「んがっ」にかなりウケました(笑)
甲斐くんの方言、博多弁なんですか。
いわれればなるほど、武田鉄也ですね。(イメージ)
リュウと会ってる時の甲斐くん、かなり自然児ですね。
さゆと会ってる時の、なんか色々いらんこと考えてる甲斐くんも
なんかかなりリアルです。
774さん、更新お待ちしております。(軽くプレッシャーかけてみる。すみません)

218  きよ  2004/07/12(Mon) 23:13
初めまして。
影ながら、楽しく読んでました☆
さりげなくも少しずつ近づいていく二人が
かなり好きですねぇ〜♪
甲斐さんとリュウの場面は、
なんだか安心して読めます★

これからも楽しみにしています。
また来ま〜す☆

219  綾乃  2004/07/13(Tue) 01:21
甲斐さんって酔うと方言になりそうですよね!!
すっごいリアルに感じました♪
リアルと言えばタカラジェンヌ・・・私も気になってます。
P.S 全角だと規制ワードなんですね笑





220  名無しさん  2004/07/13(Tue) 19:59
タカラジェンヌは実はさゆちゃんも裸足で逃げ出す策略家だったらしく、
事実は小説よりも奇なり、そんなお馬鹿サンなリアル甲斐に萌え萌え。

>タマさん。
いつもありがとうございます。
今回の更新にはきっとタマさんなら分かってくれる、
作者的に、この話最大の甲斐萌えどころがあります。
きっと喜んでくれることと信じてます(笑)
(あくまで作者的に萌えどころなだけで大筋には全く関係ないのですが)
タマさんも大人なんですね。わーい。
ダメな大人組、結成しましょう(笑)

>奈々ぽん。
いつもありがとうございます。
いやぁ、ねーさん的に何となく「奈々ぽん」って感じだったので。
(どんな感じかは聞かないでください)
そう言えば、200超えましたねー。つーか1週間で200レスって書きすぎ?(笑)
全く関係ないですが甲斐誕の次の週はわたしの誕生日だったりします。
いくつになるか聞くことは許しません(笑)
いつでも遊びに来てね〜。


221  名無しさん  2004/07/13(Tue) 20:15
>ゆうさん。
いつもありがとうございます。
そうなんです。同じ九州だし、と無理やり博多弁にすり替えてみましたが。
だれか宮崎の人。宮崎弁レクチャーしてください(笑)
自分が個人的に博多弁萌えなので。リアル甲斐の宮崎弁聞いてみたいです。
確かにリュウと一緒時の甲斐は本能のままに行動してますね。
自分で書いてても全然意識してなかったので
言われて気が付くことが多くて面白いです。

>きよさん。
ありがとうございます。
その近づき方があまりにものろいので、自分的には焦れまくりです。
どうも、この二人がいちゃいちゃしているところとか、作者ながらも
想像できんのですが、いいんですかね?(笑)
(↑多分ダメ)
この先も飽きずに楽しんでいただけるとうれしいです。
また来てくださいねー・

>綾乃さん。
ええ、ぜひ甲斐を酔わせて、宮崎弁を喋らせてその後・・・・(以下、自主規制(笑)
本日速攻某誌を入手。あまりにも無防備な撮られ様に激ウケ、
タカラジェンヌの正体を知って、また激ウケです。
リアル甲斐のこういうところがたまらなく好きです。
タカラジェンヌが規制ワードなのにもウケましたけどね(笑)


222  名無しさん  2004/07/13(Tue) 20:20

それでは。
本日の更新。

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223  774  2004/07/13(Tue) 20:21

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社員寮といっても、普通のワンルームタイプのマンションみたいなもので。
各個室ごとに、ユニットバスもミニキッチンも付いている。
生活には何の不自由もない。

違うところといえば寮母さんが常駐してて、希望出せば食堂で賄いが食えるところと。
ちょっとしたジムみたいな施設やリクリエーションルームなんていう福祉施設があることと。

周りの住人が、みーんな、知ってる奴だってことで。

それに。
チームの寮じゃなくて、社員寮だから。
当然、大多数がふつーの社員の皆様だったしりて。

でも、実はそれがやっかいで。
プライバシーは、あるようで、ない。



224  774  2004/07/13(Tue) 20:22

しかも、俺はふつーの社員じゃないわけで。
同じ社員でありつつも。
微妙に有名人だったりして。

人間関係は意外とやっかい。
君子危うきに近寄らず。

だから、さゆも、それ以前に付き合ってた女も。
今まで一度も寮に連れ込んだことはない。

うっかり誰かに見られでもしたら。
次の日には、寮中どころか、会社中に噂が広まってしまうに違いないからだ。
別に悪いことをしているわけじゃない。

でも、あることないこと囁かれるのは。
俺にとっては非常に。
なんつーか。
面倒くさいのだ。



225  774  2004/07/13(Tue) 20:27



で、だ。

何で、そんな慎重な俺が。
こんな真夜中に。
よりによって。

リュウみたいにガラの悪い女を、ツレコモウとしてるんだ?

こんな時間だから、うろうろしてる奴はいねーことはわかってたけど。
一応、寮の玄関ホールを見回して。
寮母のおばちゃんも、他の奴らも寝静まっていること確認して。

俺達はエレベーターに乗り込み、急ぎ足に俺の部屋に飛び込んだ。


「きったねー部屋だな」
リュウの第一声。
「うるせえよ」



226  774  2004/07/13(Tue) 20:27

リュウはすたすたと部屋の中に上がりこみ。
といってもごついワークブーツを脱ぐのに手間取っていたが。
ソファーの上の洗濯物の山を足でどかすと、どっかりと座り込んだ。
つーか、足ってどうだ。

俺はリュウの後ろから自分の部屋に足を踏み入れながら、リュウに聞いた。
「んで、こげんクソ暑かのにブーツなんか履いとっと?」

リュウは俺を振り返ってにやっと笑った。
「ロックはやせ我慢なんだよ」

何言ってんだ?こいつ。

俺はミニキッチンに備え付けの冷蔵庫からペットボトルのウーロン茶を出した。
洗ってあるマグカップを二つ探し出し、リュウの前のテーブルに置く。

「酒はねーのかよ」
「あるけど。今日はおしまい」
「けーち」



227  774  2004/07/13(Tue) 20:28

そしてリュウの前を横切り、着ていたポロシャツと短パンを脱ぎ捨て。
ベッドの上に放り出してある、部屋着兼パジャマのTシャツとジャージを手にして―――。

ふと気が付いた。

あ。
やべぇ。

一応リュウは女だっけ。

ちら。
背後のリュウを盗み見ると。



228  774  2004/07/13(Tue) 20:28

リュウは。
顔色一つ変えず。
パンツ一丁の俺を。
マジマジと見ていた。

「お前、やっぱスポーツ選手なんだな。いー体してんじゃん」

俺は妙に気恥ずかしくなって、急いでTシャツを着、ジャージを履いた。



229  774  2004/07/13(Tue) 20:29

「でも、ぷーさんのパンツはどうかと思うけどな」

しまった。
俺は自分が真っ赤になるのを感じた。

違う。
これは断じて俺の趣味じゃねー。
ファンの女の子に貰ったんだ。
大の大人の男にぷーさんのトランクスをプレゼントするなんて何を考えてるんだとは思ったが。
生活必需品はふつーにありがてーし。

別に誰に見せるわけじゃねーし、って思って。

くそー。
うかつだった。



230  774  2004/07/13(Tue) 20:29

リュウはそんな俺を見てゲラゲラ笑っている。

こいつ。
こいつ、ぜってー女じゃねぇ。
こいつが女なんて、俺はぜってー認めねぇ。

俺は、テレビの上の。
小銭や、車のキーやなんやらかんやらの中から。
小さな紙袋を取り上げて。

悔し紛れ、はずかし紛れに。
まだ笑い続けているリュウに向かって投げつけた。

ブルガリアで買った。
趣味の悪い、ジッポライター。



231  774  2004/07/13(Tue) 20:30

「んだよ」
「やるよ」

リュウは不審そうに、破れかけくしゃくしゃになった紙袋を開けた。

「んだよ。コレ」
「ブルガリアの土産」
「趣味悪ぃな」
「そう言うと思って」
「なんだソレ」

リュウは小さく笑った。

それから。
その悪趣味なジッポを手の中で転がして。
派手な色のガラス玉がキラキラと光った。



232  774  2004/07/13(Tue) 20:30

カチ。
そっと蓋を開けて。
シュボッ。
そっと火をつける。

カチ。
そして、そっと蓋を閉じる。

それから。
意外なほど大事そうにポケットにしまった。

「ありがと」

リュウは、照れくさそうに。
小さくつぶやいた。

何か。
俺もちょっと嬉しくなった。



233  774  2004/07/13(Tue) 20:30


「つーかさ。ブルガリアってどこだよ」
「ブルガリアはブルガリアだよ」

実は俺もよく知らねぇ。
飛行機に乗って、寝て、起きたら着いてた。
旅行で行ったわけでもねーし。
外国ってことしかわからねぇ。

「ヨーグルト、うまかったか?」
「言うと思った」

ブルガリアといえばヨーグルトぐれぇしか思いつかんわな。
行ってきた俺でもそうなんだから。



234  774  2004/07/13(Tue) 20:31


それから、俺とリュウはしばらくくだらない話をして。

俺の載ってるバレーボール雑誌を見せて。
俺が本当にバレーの選手だと納得させたり。
置いてある俺の持ってるCDを見て散々文句を言われて。
今度、本当のロックを聴かせてやる、とか説教されたり。
せがまれて、弟の毅弘の写真を見せたり。
リュウは俺の家族の写真を見て、何で全員同じ顔なんだ?と。

でも。
他人の家族の写真を見ても面白くなかろーがと思ったが。
リュウは妙に楽しそうだった。



235  774  2004/07/13(Tue) 20:31

そして、白々と空も明るくなった頃。
俺は睡魔に襲われはじめて。

ごろん、とベッドに横になった。

「そろそろ、風呂借りて、帰る」

リュウが立ち上がった。
俺は閉じたがる目を無理やり開いて。

こいつ、俺の目の前で素っ裸になりかねねぇ。
俺だって、人並みに女の裸は好きだが。
リュウの裸は見たくねぇ。

「そっち、ドア閉めて、向こう側で脱げよ」



236  774  2004/07/13(Tue) 20:32

よくあるワンルームタイプの俺の部屋。
玄関入ってすぐに向かい合ってミニキッチンとユニットバス。
そしてその奥に部屋がある。
俺は、そのキッチンと部屋の境のドアを指差して言った。

「わかってっよ」

リュウの姿が消え、しばらくしてシャワーの音が聞こえ始めた。

限界。
俺は眠りに落ちた。



237  774  2004/07/13(Tue) 20:33

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本日の更新以上。

作者の一番の萌えシーンどこか分かりましたか?ニヤリ。
ええ、ダメな大人ですとも。

ぷーさん。
ぷーさん……。

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238  タマ  2004/07/13(Tue) 21:11
タカラなんちゃら騒動に同じく萌え萌えのタマです。
自分とこの更新より先にお邪魔してしまいました。
お気に小説には夜毎現れてしまうこの悪癖。申し訳ないです。

774さん更新お疲れ様!
ぷーさんのパンツ、非常にウケました。
そして文面からして思ったのですが、
もしや甲斐選手のぷーさんはバックプリントではありませんか?
そう思ったら、必要以上にツボってしまって思わず声も出た(笑)
(違ってたら恥さらしですが)

喜んでダメ大人組、入らせていただきます(笑)


239  奈々  2004/07/13(Tue) 21:51
奈々ぽんです。笑

このまま1000レス目指して頑張ってくださーい♪爆
奈々も感想(イヤ、雑談)書きに来まーす☆★

聞いてください!!
今日『バレー』やってきましたよ。笑
なかなか上手くいかないもんでしてね…
腕、内出血してますって。笑
いやー、見てると気持ち悪いです。爆

おー、誕生日近いってイイじゃないですか♪
奈々は子供の日でしてね…
大人になっても子供の日ですよ??
はずかしいったりゃありゃしません。

プーさん…登場しちゃいましたね。笑
しかもマジマジと見ちゃうリュウさん。
かっこよすぎですわぁ…奈々、失神します。笑

240  きよ  2004/07/13(Tue) 21:58
早速来ましたっ!!★
あぁっ!!甲斐さんにぷーさん・・・!!
ミスマッチすぎて、驚きと笑いが同時に込み上げてきましたよ・・・☆
やっぱり、リュウといる時の甲斐さん最高ですょ〜♪

更新楽しみにしてま〜す☆

241  ゆう  2004/07/13(Tue) 23:01
またも来てしまいました。毎日お邪魔します。
甲斐くんのぷーさんパンツ、似合わんなー!いや、似合うのか?
と1人想像してしまいました。(怪)
それにしても、家族全員同じ顔、もツボでした。笑
私も今日偶然本屋で、ヒゲ&ヅカの記事見てしまいました。
ものすごい無防備さに、アッパレ!という感じです。
リアル甲斐と774さんの小説のカイ、共通点は無防備、でしょうか?
ぷーさんパンツはいて、人前で脱ぐカイ。
いい男です(笑)
更新楽しみにしてます!

242  タマ  2004/07/13(Tue) 23:51
すみません。まだ徘徊してます(死)

774さんの萌えどころ探しをして
再度読み耽っておりました。

「くそー。
 うかつだった。」

やはりコレではないでしょうか。
実写甲斐そしてこのお話の萌えカイ、両者に適切とも言える感情。
ち、違いましたでしょうか。どきどき…。
回答をお願いします。かなり気になり、うなされそうです(笑)


243  綾乃  2004/07/14(Wed) 01:47
更新お疲れさまです♪
プーさん・・・笑
気持ちすっごくわかります!!
甲斐さんを切れ長一重にした風貌の後輩がいるんですけど、屈んだ時に見えた
パンツもプーさんでした。しかもいっぱいいました・・・
リュウみたいに指摘する勇気がなくて笑いを必死に堪えてたんで
今日は思う存分笑わせて頂きました〜♪もうすっきりです☆
いつかヤツに恐竜の着ぐるみパジャマを着せるのが密かなる野望です笑

244  774  2004/07/14(Wed) 19:23
そういえば、今思い出したんだけど。
ぷーさんパンツのくだり書いているときに。
「よかったな甲斐。さゆとヤらないで」
と自分でつっこんでました。

>タマさん。
いつもありがとうございます。
うーバックプリント!
そこまでは自分も考えていませんでした(笑)
でも、確かに立ち位置的にそうなるかも・・・・。
甲斐のお尻にぷーさんですか。ぎゃははははは。見てぇ。

それと、意味深なこと書いてしまってごめんなさい。
ふつーにぷーさんパンツに萌えてただけです。
しかもタマさんを悩ませといて、昨日は一晩中甲斐スレにへばりついてりました。
ごめんなさいごめんなさい。
でも梨香タンまつり楽しかったです(笑)

>奈々ポン。
いつもありがとうございます。
ねーさんも遠い昔、学校の授業でやったなぁバレー。
しかも腕力がないものだから、とりあえずサーブが相手コートまで届かなくて。
苦痛だったなぁ(笑)
こどもの日が誕生日とは。まぁまだこどもだからいいではないか(笑)


245  774  2004/07/14(Wed) 19:34
>きよさん。
いつもありがとうございます。
すごくいろいろ考えたんですよ。実は。
歌舞伎ガラとか温泉マークとかキティちゃんとか。
(キティちゃんはないだろう(笑))
でも、ぷーさんが一番似合うかなと。
ちなみに、前回の更新、パンツのガラを考えるのに一番時間をかけたことは秘密の方向で(笑)

>ゆうさん。
いつもありがとうございます。
ヒゲ&ヅカ!!!!いいですねぇ。
そのフレーズに馬鹿ウケでした。今度どこかで使わせていただきます(どこでだ)
あの写真は衝撃的でしたね。
隠し撮りちゃうやん、記念写真やん!って(笑)
さすがリアル甲斐です。うちの甲斐ではとてもかないませんわ。

>綾乃さん。
いつもありがとうございます。
ぷーさんのいっぱいいるパンツ!
実際穿いている人いるんですねぇ。
というか、身近にそんな人がいるなんてうらやましいです。
一晩貸してください(←何をするつもりだ)



246  774  2004/07/14(Wed) 19:39

ところで一部で大騒ぎなヒゲ&ヅカ(笑)の件ですが。
どうやらヅカのほうの方は、ちょっとHな女優さんで、
どうやらヒゲのほうの人は、ちょっぴりはめられたくさいらしいです。
うちの小百合さんも真っ青です。
でも、このネタ使えるな(ニヤリ)とか思ってしまったので、
この後どこかでこのような展開があるかもしれません(でもないかもしれません)

んでは。
本日の更新。

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247  774  2004/07/14(Wed) 19:39

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「おい。―――おいっ」

乱暴にがしがしと誰かに蹴られてる。
シャンプーとシャワーの蒸気の匂い。

何だ?
誰だ?

混沌とする脳ミソ。
夢と現のハザマ。

「んー……」

「おいってば。あたし、帰るから。カギ、どこだよ」



248  774  2004/07/14(Wed) 19:40

今度は激しく肩を揺らされる。
うぜぇ。
うるせぇ。

俺は、俺の肩をゆする、誰かの腕をつかんだ。

うざくて。
むかついて。
強くつかんだ。

それは。
細い腕。
鼻先を掠める、シャンプーの匂いが濃くなる。



249  774  2004/07/14(Wed) 19:40

「離せよっ!」

切羽つまった声。
衝撃。
横っ腹のあたりを思いっきり蹴られた。

「いてぇ……」

俺はようやく、少し現の方に傾いて。
ほんの少し目を開ける。

リュウがいた。
濡れて、ぺったりとおでこに張り付いた髪の毛。
珍しくピンクに火照った頬。
やたら無防備に見えた。

そして。
俺につかまれてた腕をさするように抱いていた。



250  774  2004/07/14(Wed) 19:41

少し、怯えてるみたいな顔で。

怯える?
リュウが?
何に?

でも、今の俺には。
眠すぎて。
何も、何も考えられん。

「もう、しらねーからなっ。カギ開けたまま行くからなっ」

「始発、出てるだろ……電車、乗れよ」
とりあえず、言わなきゃなんねーと思ってたことを口にだす。
「うるせーよ」
「と、…見つからん…ように出てけ……」
「わかってっよっ!」



251  774  2004/07/14(Wed) 19:41

後、何だっけ。
コイツにいっとかなきゃなんねーこと。
えーっと。

えーっと。

ぼんやりと狭まった視界に。
玄関先で、ブーツを履いてる、小さな背中。

「電話、しろ」

「あ?」
リュウがしゃがみこんだままこっちを振り返る。

「電話…してこい、よ……」



252  774  2004/07/14(Wed) 19:42

俺の言葉。
リュウに届いたかどうかわからなかったけど。

限界。
撃沈。

俺は再び、海よりも深い眠りに落ちていった。



―――ばたん。

夢の中。
ドアの閉まる音が、聞こえたような気がする。



253  774  2004/07/14(Wed) 19:42

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ザワザワザワザワ。
ザワザワザワザワ。



やたらうるさい夢だった。

部屋の外を行き来する足音。
誰かの話し声。
パトカーのサイレン?



254  774  2004/07/14(Wed) 19:43

んだよ。
うるせーよ。
ゆっくり眠らせろよ。



ザワザワザワザワ。
ザワザワザワザワ。







255  774  2004/07/14(Wed) 19:43

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「甲斐。甲斐っ。起きろっ!」

やたらうるさい夢の中。
何か。
もっとうるさい声が俺を呼ぶ。
はっきりと。

んだよ。
ふざけんなよ。
俺は眠いんだよ。
リュウと昨日しこたま飲んで。

リュウ?

帰ったんじゃねーのか?



256  774  2004/07/14(Wed) 19:44

「おいっ。いい加減起きろって!」

リュウの声ってこんなに野太かったっけ―――。


ぱち。


目が覚めた。

目が覚めて。
ベッドの傍に仁王立ちになって、俺を見下ろしてるのは。
リュウとは似ても似つかない大男で―――。

千葉?



257  774  2004/07/14(Wed) 19:44

チームメイトで、同じ寮の階違いに住んでる、千葉だった。
「……なんでここにいるんだ?」
酒のせいでぐわんぐわんと耳鳴りのする頭と。
水分でぱんぱんに膨れ上がってしまったような体を、無理やり起こす。

「何でじゃねーよ」
千葉があきれたように言う。
俺は窓の外を見て。
まだ、明けきってない空。
―――明けきってない?

時計を見る。
5時45分。

5時!?
まだ早朝じゃねーか。
なんでこんな時間に、俺の部屋に千葉がいるんだ。



258  774  2004/07/14(Wed) 19:45

「何で、あの騒ぎでおきねーんだよ。お前は」
千葉はどかっとソファーに座り込んだ。
よく見ると千葉も起きぬけそのものの、Tシャツに短パン、寝癖のついた頭。

「んだよ…。何があったっつーんだ?」
口の中が苦い。
気持ちわりー。

「おめーは平和だな。寮に誰かが忍び込んだんだよ。トイレに起きたばーさんと出くわしたらしくて。」
ばーさんとは寮母のおばさんのことだ。
「俺もさっきまで寝てたんだけど、もう大騒ぎで―――」



259  774  2004/07/14(Wed) 19:45






死ぬほど。
イヤな予感。








260  774  2004/07/14(Wed) 19:46

「俺はそいつの姿みてねーんだけど。聞いた話じゃやたらガラの悪いガキで、友達の所に遊びに来たって言い張ってたらしーけど、その友達が誰かはぜってー言わなかったみてーで」

俺は頭を抱えた。

「それって、ひょっとして。女か?」

神様。
カンベンしてよ。

「やっぱり」

千葉は俺のそんな姿を見てつぶやいた。
「そいつの話聞いて、前にお前と小金ちゃんに行ったとき会った。あの「りゅー」とかいう変な女のこと思い出してさ。ひょっとして、と思ってここに来たんだよ」



261  774  2004/07/14(Wed) 19:47

俺は脚を下ろしてベッドに腰掛なおした。
自分の坊主頭をバリバリとかきむしる。

「呼んでもおきねーし。したらカギあいてたからさ。つーか、お前の寝起きの悪さ、やべーよ」

「で?」

できれば聞きたくない。
でも聞かなければならない。

「リュウ、どーした?」



262  774  2004/07/14(Wed) 19:47





だけど。
千葉が答えた言葉は。
俺が想像していたより遥かに最悪な事態で。

いくらなんでも。
まさか。

俺は自分が眠り込んでしまったことを。
死ぬほど後悔した。

俺は、千葉を部屋に残したまま、財布だけ引っつかんで部屋を飛び出した。



263  774  2004/07/14(Wed) 19:48




『キレたばーさんが、けーさつ呼んでさ。それでも絶対に喋んなかったらしくて。結局パトカーに乗せられて引っ張ってかれたらしーぜ。不法侵入だかなんだかで』






264  774  2004/07/14(Wed) 19:50

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本日の更新以上。

なんだか話が思わぬ方向に。
大変です、甲斐。

あと、堺ブレイザーズの千葉様、特別ゲスト出演。
でも実は作者、千葉様がどんな人かほとんど知らなかったりして。

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265  あさ  2004/07/14(Wed) 21:09
774さん

はじめまして。あさと申します。
今日、こちらの小説を見つけて読み出しました。
おもしろすぎてあっというまに最後まで読んでました!
上手く表現できないんですが。。。
こちらの小説はなんだかすごく新鮮で斬新な感じがします。
文章もとても読みやすいしわかりやすいです。
これからも更新楽しみにしてます!
がんばってください☆



266  タマ  2004/07/14(Wed) 21:14
あぁー行っちゃったー!!
カイ、ぷーさんパンツをアンダーに履いたままで行っちゃいました。
風呂はいいのかカイ?着替えてないだろカイ?
ごめんなさい、楽しい…(笑)

一瞬事故というベタな展開も考えましたが、
それじゃさゆに一泡ふかせられませんよね。
さすがリュウ。連行されてしまったのかー。

『ロックはやせ我慢』 実はすごくお気に入りです。
それでは、更新頑張って下さいませ〜。


267  ゆう  2004/07/14(Wed) 22:15
ああ、やっぱり事件は起きてしまったのですね。
あのままリュウがおとなしく帰ってしまうとは思えなかったので。
寝起きのヤバイぐらいのカイ、素晴らしくイカツそうです。
「ヒゲ&ヅカ」気に入って頂けたのなら嬉しいです(笑)
ヒゲの方ははめられたくさいのですか・・・
うーむ、言いたいことは沢山あるのですが、やめときます。(自主規制中)
774さん、関西の方ですか?(突然すいません)
堺ブレイザーズの千葉氏登場!
ああ、甲斐選手、堺の所属だったな、と改めて確認。
なんだかんだ言ってハマってます、このストーリーに。
リュウ、無事に帰ってきてー!

268  UUU  2004/07/15(Thu) 10:17
わぁ、事件だ!

って、すいません。初めましてです。
毎日楽しく拝見させてもらってます。
クールでドライな感じが新しくて、やや興奮気味です。
これからもちょくちょく訪問させて頂きますので、
どうぞよろしく。。
更新頑張ってくださいね!

269  774  2004/07/15(Thu) 19:32
今日も暑い一日でしたね。
うっかり溶けてしまいそうです。

>あささん。
ありがとうございます。
自分の頭の中の映像がどれだけ文章にできていて、
どれだけ伝わっているんだろうかと思うといつも不安になります。
なので、読みやすいとか分かりやすいとか言っていただけると
とても嬉しいです。
がんばります。

>タマさん。
いつもありがとうございます。
人のスレで作者より面白いことを言うのは止めてください。
思わず笑ってしまったじゃないですか!(←嬉しいらしい)
そうです、風呂には入ってません。着替えてません。
この後、甲斐がどんなかっけーことを言っても、
どんな男らしい行動に出ても(そんな予定はないですが)
パンツは、ぷーさんです。
どーだまいったか!(?)
「ロックはやせ我慢」は実は自分がロックの神様と崇めている
某ロックバンドの方のお言葉です。頂いちゃいました。
気に入っていただけて嬉しい。


270  774  2004/07/15(Thu) 19:47

>ゆうさん。
いつもありがとうございます。
甲斐って寝起き悪そうですよね。
普段温厚そうなだけに。
ちなみに自分も死ぬほど寝起き悪いです。
自分は関西ではないですが、関西寄りに住んでます。
なので、行けない距離ではないので、
一度ブレの練習を見にいこうかなと思ってます。
生甲斐の生上腕二頭筋を拝みに(笑)

千葉様にも出演していただいたので、次はガイチ監督かな(笑)

>UUUさん。
ありがとうございます。
このまま続いていくと、タダの酒飲み二人のほのぼのよっぱらい話に
なってしまいそうでしたので(それも面白そうだが(笑))
事件を起こしてみました。
リュウの正体も少しずつわかってくる・・・かな?
何せ行き当たりばったりなので。
楽しんでいただけると光栄です。
ぜひまたいらしてくださいませ。

んでは。
本日の更新。

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271  774  2004/07/15(Thu) 19:48

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玄関ホール、管理人室の前。
そこにはまだ人だかりができていた。

でも、俺は急いでいて。
誤解を解かなくちゃいけない。
リュウを助けにいかなくちゃならない。

そのことしか頭になくて。

でも、俺の、他の奴らより頭一つ飛び出したでかい体は。
そんなことおかまいなしに、目につく。

「甲斐くんっ!」

寮母のおばさんに声を掛けられる。
こんなクソ早い時間なのに。
おばさんの顔は興奮にきらきら輝いてる。



272  774  2004/07/15(Thu) 19:49

周りを取り囲む奴らも、一斉に俺を見た。

どいつもこいつも、突然の非日常に、興奮して。
どこか楽しんでるみたいな顔をしていた。

俺には、それが無性に腹が立った。

もちろん。
俺も他の奴らと同じ立場だったら。
同じ顔をしていたかもしれないけれど。

でも。
そんなことを思いやれる余裕は。
今の俺にはなくて。



273  774  2004/07/15(Thu) 19:49

「甲斐くんは、何も盗られたモノ、ない?」

おばさんに言われて。
一瞬、何のことかわからなかった。

盗られたモノ?

ああ。
二日酔いというより。
まだがっつり、俺の中に残ってる酒と。
俺の脳ミソの中、鮮明に浮かぶ。
パトカーに乗せられる。
リュウの小さな背中。

アイツは、何も。
悪いことなんてしちゃ、いねーのに。



274  774  2004/07/15(Thu) 19:50

それが。
顔のわりに。
いや、顔のことをおいといても。
世間一般と比べても。
多分、温厚な俺の。
「堪忍袋の緒」みたいなものを。
ものの見事に、引きちぎってくれた。



「リュウはドロボーじゃねーよっ!」



それは、自分でもびっくりするくらいの大声で。
周りの誰も彼もが、しんと。
まるで息を呑む音さえ、聞こえるようだった。



275  774  2004/07/15(Thu) 19:50

「甲斐…くん?」

まるで、絞りだすように。
取り繕うように出した、おばさんの声。

おばさんは、俺を可愛がってくれた。
それはありがたいと思ってた。
でも、心の底では。
自分が寮母を勤める社員寮で。
いわゆる「ちょっとしたスター」の俺。
たまに、テレビに出たりする。
中途半端に有名な俺を、やたら気にかけてえこひいきしてくれる態度は。
あまりにも俗物的で。
居もしない「自慢の息子」の虚像を重ねられれもいるようで。
うざったく思わないでもなかった。



276  774  2004/07/15(Thu) 19:50

でも、俺は、そういう期待を裏切るような真似はできない人間だし。
目上の人には尊敬と敬愛のこもった態度をとるように育てられてるし。

だけど。
今は。

「アイツは俺の友達で。俺んとこ、遊びに来てたんです。友達連れてくる奴なんていっぱいいるでしょ?何で、何でアイツだけ。ドロボー扱いなんすか?」

「だって……」

おばさんは言いにくそうに言葉を濁した。
分かる。
俺にだってわかる。
それはアイツの見た目のせいだ。



277  774  2004/07/15(Thu) 19:51

ガラの悪いファッション。
きついでかい目。
金髪の頭。

どこから見ても。
普通のいい子には見えない。

でも。
だからと言って。

背後で、唖然と俺を見ていた奴らが。
口々にざわざわと話し始めたのがわかる。

「アレが甲斐のオンナなのか?」
「アレってただのヤンキーじゃん」
「甲斐ってあんなのとつきあってたのかよ」

ぐい。
気がつくと。
爪が刺さるほど手を握り締めていた。



278  774  2004/07/15(Thu) 19:51

生まれて初めて。
こいつらをひとりひとり。
力いっぱい殴りつけたいような。
凶暴な気持ちになっていた。

お前らに何が分かる?
リュウは俺のオンナなんかじゃない。
リュウは「アレ」でも「あんなの」でもない。

俺がリュウとどんな関係だろうと、お前らには関係ない。

俺は胃からせり上がり喉から飛び出しそうな怒りを。
ぐっと奥歯で噛み締めた。

「アイツ、どこに連れていかれたんすか?」
「だってあの子……甲斐くんの友達だなんて……」



279  774  2004/07/15(Thu) 19:55

俺は強い視線をおばさんに向ける。
「どこに、つれてかれたんすか?」

「おまわりさんが……何か分かったら、堺北署に連絡してくださいって」

俺は、自分の。
一般生活においては無駄にでかい体も。
威圧感を覚えさせる自分の人相も。
よく自覚していた。

だから。
普通の生活においては、できるだけ無駄ないさかいを起こさないよう。
大人しく生活してきたし。
静かに暮らすほうが自分の性にもあってるし。
余計な事で目立つのは結局自分が損をすることも知っていた。

だから。
こんな気持ちになったのは初めてで。
自分の怒りの大きさに。
どこか自分で。
少し。
驚いていた。



280  774  2004/07/15(Thu) 19:56

俺は、必死で自分の。
やり場のない暴れる気持ちを抑える。

そんなどころじゃない。
ここで言い争いをしても何も始まらない。

それより。
早く、リュウを迎えにかなくちゃならない。

俺は。
おばさんを。
俺を取り囲むように立ってる奴らを。

押しのけるようにして。
足早に寮を出た。



281  774  2004/07/15(Thu) 19:56

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背中に突き刺さる好奇心のカタマリを払いのけるようにして。
俺は早朝の街に出た。

パジャマ代わりのよれたTシャツにジャージ。
足元は汚れたビーサン。

頭は脳ミソの代わりに砂を詰め込まれたみたいに、痛くて重い。
体も、あちこち軋んで。
まるで役に立たない錆びた巨大ロボにでもなったような気分。

でも俺は走った。
早朝でも少しもさわやかに思えない、粘りつくように湿気を含んだ空気。
昇りかけた太陽が、じりじり俺を焦がす。
水分でぶよぶよに膨らんだ血管は、すぐに大量の汗を噴き出す。



282  774  2004/07/15(Thu) 19:57

大通りにでて、やっとタクシーを捕まえる。
エアコンの効いたバックシートに収まっても、息は上がったままで。
だらだらと汗が体を伝った。

渋滞前の道路を。
タクシーは快調に飛ばす。

俺は割れるように痛み出した頭を抱える。

んで。
なんでこんなことになったんだ?

混乱。
焦り。
不安。

いろんなものが頭の中を渦巻いて。
冷静に考えることができない。



283  774  2004/07/15(Thu) 19:57

リュウの、あの噛み付きそうな、苛立ちのいっぱい詰まった目と。
大きな口をあけて、屈託なくゲラゲラ笑う顔が。

交互に俺の頭の中。
浮かんで、消えて。
混じって、ドロドロになった。

多分。
俺が悪い。

リュウ、ごめん。



284  774  2004/07/15(Thu) 19:58

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<side R>

こんな扱いには、慣れてる。
全然へーき。

自分の外見がどんなか知ってるし。
自分がどんなふーに見えんのかも知ってる。

だから、全然へーき。

知らないばばぁにドロボー扱いされんのも。
知らない奴らの好奇と軽蔑の混ざった目で見られんのも。
小僧みたいに若いけーかんに乱暴にパトカーに押し込められんのも。
取調室で小突かれて、虫けらみてーに扱われるのも。



285  774  2004/07/15(Thu) 19:58

たいしたことなんかじゃ、ねぇ。
そんなことで、傷ついたり、しねぇ。

だから。
あたしは自分を変えたりしないし。
変えることもできない。

こんなだから。
ずっとこんな目に合ってきたからからこそ。

信じるモノは自分しかない。
だから自分は変えられない。

自分が自分じゃなくなったら。
あたしは信じられるものが、何も無くなる。

誰にもわかってもらえなくていい。
わかって欲しくなんかねぇ。

だから、へーき。



286  774  2004/07/15(Thu) 19:59




ただ。
ほんのちょっと。

悔しいのは。
アイツに迷惑をかけてしまったこと。

アイツはいい奴だから。
あたしの側で生きてる人間じゃないから。
こっち側の人間じゃないから。
あたしの側に巻き込んじゃ、絶対、いけない。

悪いことした、な。



287  774  2004/07/15(Thu) 19:59

やっぱよくねーよ。
あたしみたいな人間と遊んでちゃ。
ぜってーこういうコトが起きるんだ。

楽しかったけど。
アイツのこと、けっこー気に入ってたんだけど。
やっぱさ。
無理があるよ。
気は合うけど。

なんつーか、陳腐な言葉で言えば。
「住む世界が違いすぎる」っつーか。



ふいに。
思い出したくない、昔のこと、思い出す。





288  774  2004/07/15(Thu) 20:00



『おかーさんがねぇ、竜ちゃんと遊んじゃ、ダメだってー』

『竜ちゃんごめんねー。サチコ今日から塾に行ってるの。
だからもう、誘いに来ないでね』

『……ほら、奥さん見て。あの子が近藤さん家の、例の……女の子。
やっぱり母親が母親だと、子供もあんな風になっちゃうのねぇ……』


反吐が出るほど。
嫌な思い出。



289  774  2004/07/15(Thu) 20:00

でも。
もう、何も知らなかった子供じゃない。

だから。
親が禁止する代わりに。
あたしが禁止してあげる。

カイ、もうあたしなんかと遊んじゃダメだよ。




290  774  2004/07/15(Thu) 20:02

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本日の更新以上。

なんだかどす黒い所で切っちゃってごめん。
しかし、第2話なげーな。

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291  きま  2004/07/15(Thu) 21:01

こんにちは。はじめまして。
初めて書き込みします。

ってか774さんの小説は本当にリアルで、面白い!
すごい、はまってます!
私も甲斐氏中心の小説を書いてはいるのですが、
本当、ここの小説を読むと自分ももっと勉強せねば、という気になります。
もう、憧れです♪

これからもがんばってください♪
応援してます。

292  タマ  2004/07/15(Thu) 22:43
うぉ〜!ダメだよリュウ!!
まださゆと対決してないのに…。あぁ〜、なんか切ない。
はっ、これって『切ない話。』でした。
ドツボに嵌められてしまったのでしょうか。くぅ〜!

頼むからタクシー!
早いとこ警察署に着いてくれ!!
と切実に願いながら、次の更新お待ちしてます。